ミーハー女子大生

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

4.1
久々のタイ映画。
今までとは異なり、現代を生きるタイの若者達の映画。
しかも、題材はカンニング。
脚本がよく出来ていて、二時間少しハラハラさせられました。
監督さん・俳優さんは今後要チェックですが、名前が難しくて覚えられない…(汗)。

特にリン役の女の子は、悪知恵を思いついた時の歪んだ顔、クールさから一転して感情を爆発させる顔、焦って額に汗がにじむ顔…とグイグイ引き付けられました。

中国や韓国の苛烈な受験戦争は話に聞くものの、経済発展著しいタイも例外ではないんですね。
貧富の差が、教育を受ける機会にも影響する。
受験戦争どころか、受験さえできない子どもたちがたくさんいる。
「私たちは生まれついての負け犬」というリンの言葉が胸に刺さりました。

まず、4人のキャラ設定がバッチリです。
片親で貧乏、人一倍努力して勉強に励んできたリンとバンク。
努力という言葉すら知らないんじゃないかと思える甘ったれ能天気バカのお金持ちパットとグレース。
この極端なほど明確な対比!
親の望みをゴリ押しされる裕福組の重圧も気の毒ではあるものの、庶民の私としては判官贔屓魂をぐっと掴まれます。

そして、カンニングのトリックが、シンプルでわかりやすい。
派手さでゴマ化されて狐につままれたような釈然としなさは残りません。
まあ、現実的かと言われると「あの記憶力はないやろ」とか「あの緊迫感でノーミスは無理やろ」とかツッコミどころはあるけれど、十分スリリングだったし、リンの発想は「さすが!」と感心できました。

さらに、というか、ここが肝だと思いますが、しっかりした人間ドラマであること。
父と子の愛情や思い遣り(リンのお父さん、素晴らしかった)、友情、ごくごくほのかな恋心に目が潤みましたし、何と言っても善悪のモラルが激しく揺さぶられます。
リンとバンクの所業は犯罪ですが、負け犬に生まれついたと言わしめる深い絶望から彼らを救う術を、私は知りません…(涙)。
自分の才能をお金に変えること自体は、本来、正道のはずなのに…。

「どうなるの、どうなるの」と不安にさせられながら迎えた落としどころも、軽すぎず重すぎず明るすぎず暗すぎず、とても巧いと思いました。
知っている役者さんがゼロでも、マイナーな製作国でも、面白いものは面白い!
観られたことに感謝です!

ストーリー 5
演出 4
音楽 4
印象 4
独創性 4
関心度 4
総合 4.1