幕のリア

バッド・ジーニアス 危険な天才たちの幕のリアのレビュー・感想・評価

3.9
現在のバンコクを見て、発展途上国などと言う人はいないだろう。
タイには大昔にミャンマー国境の街から首長族の村までリュック背負って行った事あり、当時のレートと物価を思い出し、カンニングのギャランティを計算していたのは序盤まで。
エンタメ性とメッセージがエスカレートしていくのにグイグイと引き込まれていく。

豊かになったとは言え、総じて右肩上がりとは言え、持てる者と持たざる者ではその角度が全く異なる。
国政がストップするようなデモなどが起きても気付いたらウヤムヤになる国という印象が強い。
持てる者に食い物にされるな、というメッセージがエンタメ作品に力強く描かれている。
ただし、劇中の歩道橋で主人公二人が決意を固めるシーンでは、車線の信号機に通行不可のマークと一方に通行可の灯りが灯っている。
貧しい二人に二者択一の道標は無い現実が突きつけられる。

汚れという分かりやすいシグナルが全編に渡り散りばめられている。
二人が初めてお互いを認識するシーンでは、バンクのシャツに汚れが。
彼の家が営むクリーニング店では未だに手洗い作業がないと仕事が追いついていない。
道端で新しいクリーニング溶剤の看板の前に立ちすくむ。
思わぬ暴力の果てに投げ出されたのは、スモーキーマウンテンを思わせるゴミ集積所で、全身汚れに塗れる。
試験会場での嘔吐。

一方リンの方は教育というシンプルなテーマが父親の姿を通して描かれているが、少し弱い気もした。

ともあれ、スタイリッシュな映像と編集に、メイン二人のルックスと顔面力で、エンタメ性を一段高いステージに上げている。

かつての第三世界から新しいコンテンツが送り届けられるのを刮目して見るべし。

〜〜

エンディングのクルンテープなんちゃら高校の校歌。
タイでは爆笑なんだろうか(^^;;

2018劇場鑑賞89本目
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