マヒロ

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
貧しい家庭に生まれながら、天才的な頭脳で進学校の特待奨学生として入学したリンは、入学して初めて出来た友達のグレースがテストで大苦戦しているのを見かねてカンニングの手伝いをしてしまうが、それが思わぬ大騒動に繋がっていく……というお話。

タイの映画というと、トニー・ジャーとかが出てるアクション特盛みたいな映画か、ウィーラセタクン監督の『ブンミおじさんの森』くらいしか観たことなかったので、こういう普通(といったら語弊があるかもだけど)の話は初めてだった。

出来心からのカンニングという小さな悪さがやがてビジネスになり、ドンドン大きくなっていった結果国を跨いだ大作戦まで膨れ上がっていってしまうというスケールのデカさには驚き。カンペとかそんな生半可なものではないカンニング作戦の大胆かつスマートなやり方も面白い。テキパキした素早いカメラ割が格好いいり
先生にバレるかバレないか…という所だけでなく、テスト内外問わずもう次から次へとこちらをヒヤヒヤさせるような出来事が起こりまくり、常に緊迫感がある。リンを追いかけ回す試験官のシーンなんか、いくら撒こうとも目の前に現れて執拗に付け回す姿は、『ターミネーター2』のT-1000ばりの恐ろしさがあった。
前半のノーテンキなカンニング話が割と好きだったので、話があっという間にデカくなりすぎてしまうのはちょっと残念だったかも。

進学校の割にみんなカンニングに頼りきりというのはなんか変な気もするが、タイってそれだけ必死にならなければいけないほど学歴がものを言う国なのかな。
そもそも、超秀才のリンがロクに努力もしない同級生たちにカンニングさせてやらなければならないのは彼女自身の貧困が原因で、どれほど才能があろうともカネが無ければ埋もれてしまうということの表れであって、これは日本においても他人事ではない問題な気がする。
この映画でも結局美味い汁を吸ってるのは金持ちで、順風満帆であるべきリンが汗水流して危険を冒しているのが哀れになってしまい、後半肝心のカンニング作戦にあまり集中出来なかった。同じ悪いことでも、カジノから金盗むとかなら金持ちが困るだけなんで別にいいんだが、こちらは余りにも切実すぎて。

ラストも含めて、エンタメ色も盛り込みつつも、単に楽しいだけのものにはせず、リアルな社会問題がずっしりののしかかってくるという一面もある作品だった。

(2019.90)
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