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バッド・ジーニアス 危険な天才たちの655321のレビュー・感想・評価

3.8
こんなにエンタメ色の強い映画だったのか!

カンニング行為自体のサスペンスフルな展開は勿論のこと、他にも、例えばパットとその家族+グレースで食事をするシーン。
パットを別室に追いやり、グレースに対してパットの父が「実はだね…」と切り出す辺りの緊張感なんてまるでスパイ映画だ。
恐らくタイって密接な親子関係が築かれている国なのだろう。
作為的でない大前提に由来する雰囲気が見事に機能して“親”が“バレたらヤバイ存在”として君臨する。

何故、彼女らがカンニングをするのか、または反省するのかはいずれも親子関係にある。
「反省」とひとくちに言っても、それは社会的モラルに反したからではなく、あくまで個人の道徳観によるものだと考える。
だから最後まで倫理観が欠如した人間達の物語だったんじゃないのかな、と個人的には思う。
そして私自身間違いなく同じ岸辺に立つ人間だから大いに共感した。

第三者(倫理観)的な目線で見ると、リズム感ある展開・編集も相まって登場人物が何故この行動を取るのかシーケンス毎の感情の繋がりを掴み辛い。
だが彼女達の目的地はぼんやりとだがちゃんと定まっていて。
カンニングをするかしないかは最後までそれほど重要ではない。成功するか否かが重要なのだ。
そう考えれば彼女達の行動も腑に落ちる。

だからこの映画を観てる間ずっと「バレるな…!バレるな…!」って思ってたなあ。
それはいずれ訪れる破滅を先延ばしにするだけの願いなのだけど、「映画」という名の切り取られた一部を観ることしか出来ない私としては、破滅を映画の外に追い出したかったんだ。
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