エクストリームマン

ザ・シークレットマンのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

ザ・シークレットマン(2017年製作の映画)
3.7
Confusion is control.

真面目な方のリーアム・ニーソン映画。とはいえ、アクションに寄った映画であろうとなかろうと彼は生真面目に演じてはいるけれど。そして、総じて妻や娘と離別しがち…。

忠誠心の篤いソルジャーであることを誇りにしていた男:マーク・フェルト(リーアム・ニーソン)が、ニクソンとホワイトハウスの暴走(と後に発覚、位置付けられることになる一連の事件)を目の当たりにして、匿名の告発者となる物語、というか実話。

興味深いのは、告発者に一貫して見て取れるような興奮や狂騒の色が、マーク・フェルトには微塵もないということだ。それもそのはずで、本作はFBIという組織に準じていることに価値を置いていた彼が、最も忌み嫌う筈の「組織への裏切り」を決行し続ける場面を映しているのだから、苦しく辛そうでありこそすれ、ポジティブな熱は特に在るはずもなく。暗闇で記者たちに向かって告発するマークの目は、常に怒りに満ちている。その怒りは、アメリカ合衆国の理念を脅かす内なる、そして中心に聳える「敵」に対してのものであると同時に、常に自分自身にも向いていたに違いない。

事件の進展と並行して語られる、妻との関係や行方不明の娘についての描写は、ある種象徴として描かれているものの、映画のラストに字幕で素っ気なく語られる妻:オードリー(ダイアン・レイン)のその後は結構な衝撃である。だからこそ、リーアム・ニーソンは本作の出演を選んだのか…というのは、流石に穿ち過ぎか。

そういえば、娘:ジョーン役がマイカ・モンローで、『イット・フォローズ』以来まともな映画で彼女を見た気がするけど、ことのほかヒッピー装束が似合っていたので、ポール・トーマス・アンダーソンが『ヴァインランド』を撮ることがあるなら出てほしいとか、関係ないことを考えてしまった。