素晴らしいドキュメンタリーだった。
チベット人ラモツォの亡命後の日々。
この映画ではスリリングな事件を目撃できるわけでもなく、堪え難い葛藤を観られるわけでもない。チベットの抑圧された現状を詳しく知るとこともできない。
亡命したチベット人をただ観るだけ。それだけなのに涙がこみ上げた。
ラモツォとその家族は僕や僕の身の周りにいる人たちとは違う種類の人間だと直感した。確固たる優しさを持っているのだ。意思により優しくしているのではない。無自覚に優しいことをしている。そう感じた。
何よりもすごいと思ったのは、そんな彼女が変わらないこと。アメリカで独りぼっちでも変わらないのだ。
田舎から出てきた純朴な少年も都会の人混みに流されて変わってしまい、いつしか人混みの中に消えてしまうような現代社会で無自覚な優しさを持ち続けるなんて奇跡だと思った。
映画ではいつも人間のネガティブな面を観たいと追い求めてしまうのだけれど、ポジティブな面に泣いた。