ベルサイユ製麺

青春夜話 Amazing Placeのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

青春夜話 Amazing Place(2017年製作の映画)
3.2
よく内容を知らず借りてしまったのだけれど…コレは…。
無茶苦茶苦手で、滅茶苦茶深くソファに沈みながら観てしまった…。心臓をガードしながら防御の構え。強キャラが言う「俺は、…コイツに怯えているのか?」みたいな構図です。実際はザコキャラAです。
観終わっても感想がまとまらず、もう諦めてサッサと寝てしまった。このままレビュー書かないという手も…。

☀︎
一晩置いて考えるに、取り敢えずこの作品を、是が非かで言えば“是”です。目覚めも良かったし。


トボトボという響きが相応しい歩き方、貧相な身体つき、力の無い顔つきの、ギリギリ中年手前くらいの気の弱いサラリーマン。ボンクラ学生の蹴った空き缶が背中に当たっても最小のリアクション。…彼は青春の眩しさに負い目を感じている。
既婚の上司に誕生日プレゼントを選ぶOL。ギリギリ“若手”枠から押し出されそうな頃合。社に戻ると上司は既に帰宅。若手OLや御局の視線が痛い。…自分は何でこんななんだろ。
この2人に接点は無い。強いて言えばたまたまガード下のホームレスに思い入れ、男は小銭を、女は渡せなかったプレゼント(まあゴミです)をあげていたくらい。
で、その日、2人は勇気のかけらを絞り出し、結果なんやかんや有り(ちゃんと観てましたって!)何故だか吊りバシっーっと意気投合。バーで程よく酔い、同じ高校出身だと判明、テーブルの下でそっと手を握りあった辺りで完全に出来上がったおります!
2人の落とし所は“われわれは存在そのものが復讐である”だそうです。…ふうん。

バーを出て、“なさる”気満々の2人。男は女の手を引いて、何故か二人の出身校に…?

…で、以降急激にエロに振られた展開を迎えます。エロなんですよ。あーあ…。
今作のエロは、機能性(?)こそ有りませんが、精神に訴えかけてくるような質の不恰好で情けないエロです。例えば専門のポルノのエロってプロレスと同じで自分の身体性の延長上に有るとは思えない様なもので、その意味で言えば、今作のまるでコントのような不格好・間抜けエロの方にリアリティを感じてしまいます。ハイパー・リアリティってヤツか?(違う)
2人は延々と夜の校舎で机をくっつけて学生服で、プールで、美術室で、アレするのだ…。テンションが上がり、机に絵を描いたり、ボディペイントしたり…。しかしコレは果たして“復讐”たり得るだろうか?が、よく分からない。誰に、何をされた腹癒せに、今ナニをするという事が誰に対する復讐なのだろうか?“学校”という概念自体に?自分には、単に学校でしたかった事をやっているだけにも思える…。
そりゃあ、シたいよね、こんな事。凄く分かる。夜の学校は最強のエロティックディザイアが立ち込めてますからな。…違うの?

自分の事を振り返れば、ペンタブラック並みのドス黒い青春であったものの、誰かに危害を加えられた事も無かったし、楽しくないのも全て自業自得で。寧ろ、例えば学校生活を真っ当にエンジョイ大成功してた方にとっては、視界の隅に入りこむ“机に突っ伏して寝てるアイツ”、“授業中イヤホンでハードコアパンク音漏れさしてるアイツ”こと私の方こそが、キラキラした青春の端っこにシミのように映り込む汚点、復讐したい対象なのではないかな…なんて思い続けておるのだ。
…だから、やっぱり2人が“復讐”なんて思っているってのは合点がいかなくて、ああ、エロがしたかったよね、そうだよねって程度に感じてしまいました。いつか、照れ隠しの“復讐”なんて使わずに、堂々と何処ででもエロ出来るといいね、と心の中でエールを、何処かに送っときましたよ。
それでも本当にコレが“復讐”だと言うのなら、この作品は自分にとっては“非”なのです。根拠無くいじめにあったとでも言うのならともかく、大概の事は自分のせいなのだから。

映画のルックの事について言えば、演技や脚本の拙さから来るネガティブな印象は、映像特典のメイキングを観てしまうと全て消える、…というか寧ろ“あばたもえくぼ”的にキュートに思えてきます。“あの環境でよくぞ!”では有るけれど、“あの環境だからこそ”とも言えそうです。どんなに大変でも、映画を手作りするのなんて楽しいに決まってる。羨ましいなー。自分はヤりたいこと、もう思いつきもしない。

因みに切通理作さんの事は名前以外全く存じません。鑑賞に於いては寧ろ知らなくて良かったと思います。映画同様、ご本人もきっとキュートな人なのだろう。著作に興味が湧きました。読めばこの作品に対する理解も深まるのだろう。…きっと読まないけど。それはもちろん別に復讐でもなんでも無くて、単なる怠惰なのだ。最近、寝るよりしたい事が無い。