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羊飼いと屠殺者のkuuのレビュー・感想・評価

羊飼いと屠殺者(2016年製作の映画)
3.7
『羊飼いと屠殺者』
原題Shepherds and Butchers.
製作年2016年。上映時間106分。

南アフリカで死刑囚房看守の青年が7人を射殺。 絞首刑の立会 いという過酷な任務を強いられてきた若者の心神状態とは。 熱 意ある弁護士が真相の究明に動き出す。
出演スティーヴ・クーガン、 アンドレア・ライズブロー、 ガリオン・ダウズ。
監督: オリヴァー・シュミッツ

南アフリカのアパルトヘイトの終わりに近づくと、若い白人の刑務官が、7人の非武装の黒人男性たちを撃ち殺す銃撃事件を起こす。
彼の訴訟に割り当てられた英国生まれの弁護士(スティーブ・クーガン)は、彼の行動が彼の不安定な職場環境からの精神的外傷の直接の結果であることを証明するために着手。
弁護人は死刑の熱烈な反対者であった。。。

アパルトヘイト時代の南アフリカを舞台に、残酷さと繊細さを併せ持つ美しい映像で描かれたドラマでした。
今作品は1980年代のプレトリアを舞台にした時代劇であり、ケープタウンで撮影され、細部まで説得力がありました。
また、時に生々しく、ハラハラさせられながらも、型破りな展開で結末を迎える。
法廷が中心でしたが、被告人が死刑囚監房にいた過去が何度もフラッシュバックし、クーガンが彼の弁護をしながら裁判を進めていく様子が描かれていました。
刑務所と死刑執行のシーンは、説得力のある多くの脇役たちによって、気ショク悪いほど詳細に描かれていました。
法廷にも、裁判官から遺族まで、よく観察されたキャラが何人かいる。
被告人の元看守は、若すぎるし、精神的にも感情的にも殻に閉じこもっているけど、作中で徐々に痛々しいほど心を開いていく。
最初は消極的で、次に興味をそそられ、最後には弁護人として完全に決意を固めている。
この説得力のある描写で、カメラは彼を近くに置いてる。
映画全体が美しく、巧みな照明とスタイリッシュで、時代と場所の細部にまでこだわってたかな。
アフリカーナ軍将校の静かな冷徹さ、法廷の親族、
そして、栄光。
死刑の議論のいくつかの側面に触れ、純粋に感情的で示唆に富む作品でした。
死刑執行。
死刑囚の体重と身長に応じたロープの長さの測定。
落とし戸の開放。
死刑にまつわる行為と関係者。
死刑について考える時、多くが死刑囚に焦点を当てる。
死刑執行人、
つまり判決の実質的執行者、
レバーを引く人、
ボタンを押す人に焦点を当てることはほとんどない。
死刑囚と一緒に暮らし、
彼らの世話をし、
話し、
彼らの家族と知り合い、
絞首台に同行して縄を渡し、
仕掛け扉が開く音を聞き、
死の臭いを吸い込む看守にはあまり焦点が当てられない。
しかし、この物語で登場するのはまさにこうした側面であり、刑務官を死刑執行人から倒錯したシステムの犠牲者に変える。
このシステムは善と悪の間の距離を取り消し、人間が互いに殺し合うことを可能にする非人格化を破壊して、
人間性を悪者、
敵、
異なるものといった非人格的レッテルに置き換え、
誰かではなく、
抑制できるものを与える。
結局のところ、
これが戦争や、
合法的であれ非合法であれ、
人間が奪われるあらゆる場面で使われるメカニズムなんやと思う。
相手にレッテルを貼り、
自分以外のものに変え、
その人間的側面を消し去る。
だけど相手を人間として考えたとき、その抑圧は自然に対する行為であることがよく理解できる。

羊飼いと肉屋を同時にやることはできない。

最後は複雑な心境になりました。

国家が自国民を殺害することに同意することは、忌まわしいことです。
どんな犯罪であろうと。
国家は自国民の命を奪うことに関与する権限を与えられてはならない。
それが正しいか否かの答えがより真理に近づくまでは、死刑執行を停止することが唯一のみちなのかもしれないなぁ。
kuu

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