いの

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男のいののレビュー・感想・評価

4.5
世紀の一戦、とのことだ。いつものように、なんも知らずに観てしまった。レビューも、なんも調べずに勢いで書きます。邦題には「氷の男と炎の男」とのサブタイトルがついているけど、そんなもんいらねえ。ボルグは、〝氷の男〟と言われているようだし、ボルグとマッケンローは対照的な人物のように当時人々はとらえていたようだけど、2人の内面に抱えているものは実はおんなじ。ボルグもマッケンローと同じく、ホントは短気でキレやすい。心の中に猛烈な激情、怒り・葛藤・不安を抱えている。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだと、心の中にシンジ君を抱えている。自分自身とのギリギリの戦い。そんな2人が、2人一緒だったからこそ成し遂げたこと。映画は、2人のプレイヤーそれぞれの子ども時代を、上手に回想シーンとして挿入していて、それも良い。テニス界の特権意識(テニスは誰に対しても開かれているものではない、という話)などもチラリと見せていて、巧いなあと。


「この星で1番 孤独な男」
ウィンブルドン5連覇なるか!?

ボルグの孤独は壮絶を極めている。人は誰だって孤独だしそこから逃れることはできないけれど、この映画のボルグを観ていると、わたしは自分の孤独を持ち出すことなど申し訳なさすぎて口にできない。そういった意味からも、観るとなんだかとても励まされる。お前なんかたいしたことないと映画から言われることも(映画から言われるまでもないことだけどw)、わたしにとっては必要なことだ。この映画は、これから定期的に見かえす映画になるかもしれない。


旧知のコーチがいても、フィアンセがいても、彼の孤高の戦いは、彼にしかできない(そしてマッケンローだけが、この孤高の戦いを分け合うことができるようになるのだろう)。


映画はボルグを中心に描かれた。冒頭からわたしはボルグに萌えた。ライアン・ゴズリングが未婚のうちに、彼と出会わなかったことを、わたしはかなり真剣に後悔しているけどw、この映画のボルグを観て、どうしてわたしは1970年代に全仏オープンに出てボルグに見初められてデートできなかったんだろうと、これまたかなり真剣に後悔した笑。


さて、世紀の一戦。試合結果も知らなかったので、真剣にボルグを応援してしまった。神さまに祈るようにボルグの勝利を願ってまった。生中継の試合観てるように、画面に向かって声援を送った。お願い神さま、今回だけは勝たせてください。次は負けてもいいです。引退してもいいです。でも今回だけは。今回だけは、勝たせてください。


映画は2人のプレー、中継の声、歓声などから試合を映した。セリフがほとんどなくて(セリフがないからこそ)まるでふたりの心の内が聞こえてくるかのようだった(そして、ボルグがマッケンローにかけた一言がとても良かった。あれ実話なんやろうか)。世界でいっとう孤独なボルグは、マッケンローとの試合を心底楽しんでいたのだろう。それまで悪態つきまくりのマッケンローの、真摯な態度も素晴らしかった。まるで命すべてを賭けるかのような壮絶な試合が行われるからこそ、『アマンダと僕』のアマンダの心を、いずれ鷲掴みにすることになるのだろう。そのことをわたしは体感した。


 🎾🎾🎾

ステラン・スカルスガルドさん。ノオミ・ラパスのミレニアムでのクソ野郎とか、ソーでのチャーミングなセンセイとか。わたしは心のなかで、〝スウェーデンの至宝〟という冠をつけてお呼びしております。今作では、ボルグのコーチ。
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