シネマノ

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男のシネマノのレビュー・感想・評価

3.7
「あまりにも静かなドラマがみせる一度きりの炎」

テニス界では語り継がれる名試合を軸にビョルン・ボルグの半生を描く本作。
事前にまったく知識がない状態で観たものだから、ここまで起伏がないことに驚いた。
一体どこで盛り上がるのかと考えていた時点で、映画的快楽を求め過ぎていたようで。。

プロスポーツの世界。
なかでも世界の頂点に立ち続けることは、ストレスと重圧でがんじがらめになること。
そこに華はなく、常に周囲に晒される自分との戦いなのだろうか。

中盤から、時折挿し込まれるお互いの過去すら邪魔になるほど
"今この瞬間"と向き合い、もがき、戦うボルグとマッケンローに釘付けになっていた。
もはやドキュメンタリーで作っても良かったのかもしれないとさえ思えるほどに。

氷の男と呼ばれた男が秘めた、たぎる程の熱。
その氷を溶かして解き放つのは、熱情を剥き出しにして頂点に駆け上がろうとする若者。
世界の頂点という無二の場所を目指す者がもつ魂が通い合った瞬間の、
たった一度魂の奥底から湧き上がった炎のような熱情は、静かすぎる本作であまりにドラマチックに映っていた。

またシャイア・ラブーフが演じるマッケンローがまさに童のようで、憧れ続けた伝説の存在に挑む姿にも愛着が湧く。
決して娯楽映画ではないけれど、作り手の想いがよく伝わってくる一作。
邦題は仕方ないかもだけど、少しダサいかな。。
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