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30年後の同窓会のJIZEのレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
3.6
約30年間音信不通だった旧友と偶然再会した事から戦死した息子の遺体を自宅に連れ帰る啓蒙ロードムービー‼全編は中年のオジサマたちが紡いだ郷愁感ある内容で糖質ゼロのブラックコーヒーを飲みほすような人生のシブ味と孤独感をブレンドさせたような作品でした。原題の「Last Flag Flying」は要約で"最後まで旗を降ろさず降参しない"とか本編のオジサマたちが旅を続ける根っこの信念に被せたような含みに受け取れた。どちらかと云えば中年のおっさん三人が自由奔放に残りの少ない半生をたのしむ旅映画というよりも過去の出来事を総精算するような義務であったり贖罪のような重厚感がややシリアス方向で至って真面目に構築されている。おもにボブ・ディランの楽曲がかかるクラシックなある場面,推定50オーバーのおっさんたちが下世話な軽い冗談話で抱腹絶倒するコメディなど音楽や会話劇のウエイトに時間を割いてるため全体でどうこうと云うよりかは時間の不可逆な連なりを意識させるリンクレイターならではの定型に落とし込んだ熟練の役者たちが熱を注ぎあう感動ロードムービーでした。極論云えばコメディの日常場面は全描写面白かったです。

→総評(約30年間の空白を繋ぎとめた固い信頼)。
全体的にブライアン・クライストンの肝が据わってて軽妙な芝居が全場面最高である。また"人は何十年間も会ってない友達を果たして信用できるのか..."という主題の問いかけや"誰でもかつては違う"事に対して中年のオジサマたちが微細にでも歩を進めるうちに心を通わせていく工程はロードムービーの旅情感とも併さり作品テーマそのものとの整合性がリンクレイター監督の安定感ある力量からも充足感あり長けていたように感じました。また所々で人生の熟練者が唾を吐き捨てるような名言も沁みていい。例えば「人は皆移動してる...死んでからでもな」という黒い笑いとも取れるような台詞や夜道のハイウェイで「俺の車線だ」と舌打ちし中指をたてる一幕など戦死した旧友の息子を連れ帰るシリアスパートと年老いても遥か昔のようにふざけあうコメディパートがいい案配でブレンドされてるのは本作の美点だったように感じました。苦言をていせば会話劇過多における間延びやオジサマたちが問題の解決に向かう目線が過去にしか向いてないため何か今,現在進行形で今日何かが変わるようなエモーションがあれば更に評価が上がった模様。ゆえに作品の間口であったり事前に"50歳版スタンドバイミー"と名言する割には冒険要素が薄く感じてしまいむしろ俺はそこの遊びが効いたウエイトをこの作品に求めていたので消化不良感はやや否めなかったです。いわゆるロードムービーの脚本そのものが二転三転した結果に渋滞を起こしていて交通整備の仕方が雑に感じてしまった。また冒頭で同窓生がバーで安易に集結してしまうカタルシスがないハードルの低さや彼らのベトナム戦争時の背景が台詞だけでリアルさが生まれず過不足な点も同じ指摘に帰因する。あくまで巨匠リンクレイターお得意の"人間の成長"にまったりフォーカスして観る分では常にクラシックで時代感の年季が盛り込まれたオジサマたちの苦悩と解放をまったりとした雰囲気で紡ぐ作品なのだった。
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