ノラネコの呑んで観るシネマ

30年後の同窓会のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
4.7
アメリカ市民であり、軍人であることのジレンマを、これほどウィットに富んだ表現で描いた作品があっただろうか。
2003年、退役軍人のスティーブ・カレルの元に、イラク派遣中だった海兵隊員の息子の戦死の一報が届けられる。
遺体を引き取り埋葬するため、彼はベトナム戦争の戦友二人を訪ねて同行を求め、カレルとブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーンは、ハプニング続出のアメリカ北東部を巡る長い旅に出る。
原作はハル・アッシュビーの「さらば冬のかもめ」の続編小説だが、映画版は一応独立した作品。
それでもキャラクター造形などに強い影響が見られ、クランストンがニコルソンで、フィッシュバーンがヤング、カレルがクエイドの役の30年後の姿。
なぜカレルは、長い間疎遠だった二人を誘ったのか、次第に30年前に起きてしまった、ある事件の因縁が明らかになって来るという構図。
浮かび上がるのは、国家の戦争と個人の戦争の乖離。
ベトナムもイラクも、アメリカの安全が直接脅かされた訳ではなく、派遣された軍人個人にとっては意味のない戦争。
それでも軍は、犬死という訳に行かないので、英雄を作りたがる。
たとえ、それが嘘だったとしても。
現役軍人も退役軍人も、どこかで平和な生活を求めるアメリカ市民であることと、命じられればどこへでも行く軍人であることのジレンマに折り合いをつけねばならない。
カレルが同じ息子を失った父親として、サダム・フセインの心に思いを巡らせるのが印象的。
フィッシュバーンとクランストンの、丁々発止の掛け合いが最高。
しかし2003年には、これが戦争が戦争を呼ぶ終わり無き戦争の時代のはじまりだとは、誰も知らなかったんだなあ。
ブログ記事:
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