Iri17

30年後の同窓会のIri17のレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
4.5
リンクレイターと言えば『6歳のボクが大人になるまで』が有名だから、配給会社がそれに被っているともいないとも言えない中途半端な邦題をつけたあたりが残念だが、素晴らしい作品だ。

中年のロードムービーであり、アメリカという国家の政治的な映画であり、反戦映画である。
妻を病気で亡くし、息子を戦争で亡くした男が、ベトナム時代の戦友と息子の遺体を引き取りに行く話。

かつて自分たちがベトナムでやった事は正しい事ではなかった。しかし、全く同じ間違った戦争によって息子を失ってしまった。この国は何も学ばないのか?中年オヤジたちの疑念と怒りが胸を打つ。
この映画は「今」の話ではなく、約15年前のイラク戦争の際の話だが、やっぱりこれは「今」の話である。ベトナム戦争、イラク戦争、現代の対テロ戦争、何も変わらない。どれも国を守るためなどではない。国を守るための戦争と信じて、息子を見送ったが、やっぱりそんなのは嘘っぱちだし、息子の死は何の意味もなかった。英雄なんかじゃない。それを父親は知っているから、どうしようもない虚しさが込み上げてくる。

現実主義者の戦友と神に救いを求めた戦友の2人の対比が素晴らしい。辛い現実に向き合って苦しんでも仕方ない。死後に救いがあると信じる男も、辛くても現実から逃げてはいけないと考える男はどちらも間違いとは言えないと思う。
そしてラストは、現実に向き合いながらも、国家というものを信じていくというものだった。

僕は主人公の選択には反対だが、批判はできない。理想にすがらないで生きていくには、現実は残酷すぎるから。
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