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30年後の同窓会のktのネタバレレビュー・内容・結末

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「好きな映画は?」と聞いた時、「ビフォアサンライズ」と答える人もきっといるはずだ。そんな、「とりとめのない会話を永遠と続かせる天才」がリチャード・リンクレイターだ。

今作もまたロードムービー会話劇。車の中から、電車の中、モーテルの中、夜のレストランと場所を転々としながら、とりとめのない話を続けていく。これがまた不思議なのだが、それぞれの会話がお話の本筋に複雑に絡んできたり、後々の伏線になったり、過去の出来事が浮き彫りになったり、しないのだ。
そういった、映画的な仕掛けが全然ない。たしかに、それぞれの会話の中でキャラクターのことはわかってくる。だがお話が急に動き出すような決定的な秘密が暴かれるわけでもなく、過去の回想シーンが入るわけでもなく。他の映画ならベトナム戦争時代の回想くらい入りそうなものだがそれがない。

でも、観れる。これが重要。監督と音楽とキャストのなせる技。
あくまでしゃべっている彼ら3人の中年の現在こそが大事なのだ。劇中なんども出てくるセリフだが「時計は元にもどせない」ということ。いくら懐かしんでも昔には戻れない。今の中年3人が、どんな人生をこれから歩んでいくのか、それを暗に示している。

物語は驚くほどゆっくりと進み、思っていた以外のことはおこらない。最後の手紙の内容でさえ、新人の助監督がついさっき書いたのか?と思うようなベタベタな内容である。しかし、そのシンプルな潔さが、今作には合っていた。

この映画は、体力の衰えた中年3人のリズムに合わせて作られている。激しいドラマはおこらない。だが、人生の中にはきっと、ああやってゆっくりとこれからの行く末を見つめなおさねばならないようなタイミングがやってくるのかもしれない。そんな時、自分の大元を知っている旧友の存在は大きい。そう思わずにはいられない。

題材的にはアメリカならではの反戦的な内容の映画であったが、「友情」という普遍的なテーマを描いた作品として良作であった。
このDVDは、自宅の棚の隅っこにそっと置いておきたくなる。またいつか、見返したくなる日がくるだろう。
kt

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