こうん

ブッシュウィック-武装都市-のこうんのレビュー・感想・評価

3.9
例のジェームズ・ガン解雇における立ち振る舞いで(俺の中で)男気を発揮させまくっているデイブ・バウティスタが主演(しかも製作総指揮でもある)で、また長回し表現を多用したチャレンジングな映画であるということにも興味津々で、初日に観てまいりました。
ブッシュウィックというのはニューヨークはブルックリンの一区画で、劇中の説明によると様々な人種の人がひしめいて住んでいる場所とのこと。ゆえに治安が悪かったそうですが、いまはオシャレ地区に変わりつつあるらしいそうです(集合知情報)。

そのブッシュウィックに実家のある女の子が彼氏連れて戻ってきて地下鉄駅出たらもう戦場でしたという物語。山を越えたら戦場でしたという光州市事件を想起したのは言うまでもありませんが、基本的にカメラはその女の子ブリタニー・スノウ(「ピッチ・パーフェクト」に出てたというけど全然覚えていないや)に随行する形の長回し。
つまり彼女が突如迷い込んでしまう地獄めぐりを追いかける形で、「ブッシュウィック」という映画世界に引きずり込まれる作りになっております。

まぁその長回しによる没入感はあるし、ここはどうやって撮っているんだろうという面白さはあるんだけど、そこまで執拗に長回し(風の撮影)にこだわられても、逆に長回しそのものが際立ってきて、逆にカメラの存在を感じさせて没入感とやらはそがれていくことに気付いてほしいです。本作では特に絵面的にも起きる出来事もわりに単調というか一本調子だから、余計にそう思う。
普通にカット割ればいいのに。
その長回しにこだわり、カットを割らないことで描かれるドラマの焦点がぼやけて、バウティスタさんやスノウさんの人となりがあんまり伝わらず、特に徐々に変わっていくスノウさんの心情に寄り添いたいのに、それに必要な彼女の演技演出を見せることが長回し優先で二の次になっていて、超残念。
コース料理で延々と魚料理出されても、その店の良さは分からなくなってしまうよ。
(前菜やスープやデザートもください。もちろんここぞというところでメインデッシュも)

地下鉄を降りたらいきなり戦場で、何が起こっているかというといくつかの州が独立蜂起して新南北戦争とも言える状態になっているわけだけど、そこにはトランプアメリカの格差分断差別不寛容の末のリアリティのあるカリカチュア劇として面白いし(たぶんバウティスタもそこにのって製作総指揮を買って出たんだと思う)、観客をこの戦禍に巻き込むような語りのコンセプトもいいけど、やはり長回しに固執することで本末転倒になっているのじゃないかと思う。
終盤のシリアスな展開や、数々のスペクタクル表現や銃撃戦も頑張っていたので、余計にそう感じましたですよ。
バウティスタも渋くてかっこいいんだけど、やはりなんかキャラクターとして煮え切らなかったな。めっぽう強いのは強いけど、ガラス刺さって痛がるのはリアルで面白かった。
(最近は人間離れしている役ばかりだからね)

まぁ感想を一言で申せば、もったいない!というところでしょうか。

あとイベントは(面白い面白くないは別として)鑑賞後にしてほしいです。いろいろご都合もあるんでしょうが。
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