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デンジャラス・プリズン ー牢獄の処刑人ーのmのレビュー・感想・評価

4.9
S・クレイグ・ザラー監督、この人はホンモノだ。ホンモノの天才で、どうやらホンモノのキ○ガイだ。この監督の事は今後気に留めておいた方が良い。

豪華キャストの超暴力西部劇「トマホーク」で鮮烈に登場したザラー監督の作風は相変わらず、というか更にヤバい方向に深化している。低体温で即物的過ぎて間が抜けたような独特の空気の中で淡々と唐突に凄まじい暴力が訪れる。この独特さを言葉で言い表す事ができないのが歯がゆいが、とにかくシュールで即物的で低体温で淡々と間抜けで緊張感が漲っている。本来省略していいような場面までやたら丹念に見せる辺りがまた狂っているし、映画全体のペース配分も独特過ぎる。ワイドレンズで全体を見渡せる所に適当にカメラ置いたような気の抜けた画がそんな作風にさらに拍車を掛ける。

感情をあまり見せずに屈強な肉体で淡々と事態を打破していくヴィンス・ボーンが映画の作風を見事に体現している。もともとコメディ畑の印象が強かった人だが、「ハクソー・リッジ」に続きシリアスな芝居で見事新境地を切り開いた(つい最近逮捕されましたが)。
妻役のジェニファー・カーペンターもラストで素晴らしい演技を披露している。あとウド・キアはやっぱり出てくるだけで面白いです。

「トマホーク」でも近年稀に見る強烈な暴力描写があったが、今回も負けず劣らずのこれまで見たことのないような斬新で強烈な暴力描写が唐突に淡々とやってくる。あまりに淡々と壮絶な事が起こるのでもう爆笑してしまう。

終始淡々と即物的であり続けるからこそ、ラストの鮮烈なエモーショナルさが際立つ。
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