マクガフィン

Visionのマクガフィンのレビュー・感想・評価

Vision(2017年製作の映画)
3.2
永瀬正敏の渋い表情に終始することやジュリエット・ビノシュの微妙な表現で行間や心情の解釈を委ねる演出は、双方とも面白みに欠ける役だが、外国人女優と日本人男優の組み合わせた違和感を感じないことは好感で、邦画では貴重に。

物語の外堀を埋めていく説明会話に終始して、日常的な何気ない会話が少ないことに違和感。ナレーション的な現地民の男は宗教的なイメージを感じて疑問に。独自な世界観や自然学的な自然観に興味は持ちつつも、次第に興味が薄れてきたことは相性が良くない結果だからか。

コミカルを一切挟まない、ひたすら一方的で重厚さを求めるテイストは嫌いではないが、邦画に良くある雰囲気映画の枠を飛び越えているとは言い難い。
光との兼ね合いだろうと思うが、盲目だから感受性が強くミステリアスさを追加する演出や動物の命をメタ的に描写することも鼻に付く。

薪で火を炊く五右衛門風呂、火で料理して、火で温まるなどの日常的な火の熱源をイメージさせることは、文明の一部である火の活用により、千年の歳月の一部やVisionで光源を見せる演出に綺麗に繋がるのかは微妙だが、何となく理解はできた。風で揺れる森や木も作品の構築に欠かせなくて良いが、その2つに比べて水と土の演出が弱いのが自然的な均衡を保てなかった所以のようで、転生輪廻の演出も疑問に。

肝心のVisionのシーンも既視感溢れる。幻想的で炎に囲まれて逆光で舞踊を見えにくい。このようなシーンは必ず神目線のような俯瞰ではなく人間目線で、寄りの映像はフォーマットの範疇に納まる。つまりBOXINGやスポーツシーンと同じで、素人に演出させても粗が目立つので寄ってごまかしており、随分アッサリしている印象に。これまでの自然の俯瞰映像は何だったのか。

その他も哲学的な疑問、理屈や道理が立たない違和感、時系列も独りよがりなことによる論理の飛躍はアヴァンギャルド映画でなく、観念的映画の範疇に収まった印象に。大きく逸脱してはいないが、せめて前衛的にしたいのなら説明会話をもっと省くか、もっと道理的にしないと基準や核があやふでバランスが保てなく、また訴えが弱い。
そもそも、本当に良い映画を作りたいなら岩田剛典を配役に起用するか?演出も疑問に。

独自な試みは評価したい。一番心配なことは、LDHとタッグを組みそうな河瀨監督の今後の方向性が心配に。