あんじょーら

V.I.P. 修羅の獣たちのあんじょーらのレビュー・感想・評価

V.I.P. 修羅の獣たち(2017年製作の映画)
3.2
「悪魔をみた」の脚本家、「新しき世界」の監督、パク・フンジョンさんの作品です。結構な極限状態を描いた作品だと思います。ですが、私は今作は脚本に、もう少し、練り上げが必要だったと思います。決して悪くないんですが・・・

プロローグ 空港から降り立った男(チャン・ドンゴン)は後輩と思われる男から、車を借りてある店に立ち寄ります。そこにはアメリカ人であるポール(ピーター・ストーメア)が居て・・・というのが冒頭です。

章立てていますし、ある種の円環構造ですし、韓国ノワールとしてもなかなかな作品です。今回は三つ巴の争いを描いている、という事だけ理解していればまず問題ないと思います。

この映画のタイトルであるVIPは何を指しているのか?といえば、ネタバレには繋がる可能性もあるかと思いますが、どう考えても非常に問題のある、しかしなかなか手が出せないある人物の事、だと思います。

韓国ノワール作品をたくさん見ている訳では無いのですが、今の所、韓国ノワール作品のベストは「アシュラ」で次点で「殺人の追憶」です。

今作も、非常に意欲的な展開ですし、アクションもありますし、バイオレンス描写もあります、今回はぼかしさえありました。それも製作者側の意図なのでこれは問題ないかと思いますけれど、大変ヒドイ行いを逃げずに描いています。

ですが、私は脚本に少し問題というか、まだもっとブラッシュアップ出来たんじゃないかな?と思っています。ココはネタバレに繋がるので、後ほど。

ですが、三つ巴の戦いと言う意味では新しいですし、それぞれの役者に光が当たるシーンがあり、これは良かった。

国家情報院の一員であるパク・ジェヒョクを演じたチャン・ドンゴンの、成長というか変化、その凄みがイイですね。またキャラチェンジにメガネを効果的に使っているのも良かったです。

次いで警察の荒くれもので能力も高いが態度もデカいチェ・イドを演じたキム・ミョンミンの、その横暴さもさることながら、しかし綺麗事では済まされない場合の、緊急事態の、生命がかかっている場合の、覚悟、警察機構としての重要性がかかる事態だからこそ、の、覚悟があり、非常に魅せます。もちろん、そうはいっても越権行為でもあり、暴力的な犯罪でもある部分もかなり含まれますけれど。

さらに、ある組織からの脱出者リ・デボムをパク・ヒスンが演じていますけれど、この方も影が合って、それが良い感じです。寡黙で、しかし執念を燃やす男。ちょっとスーパーマンのような何でもできる男になってしまっているのが、実は脚本の弱さでもある気がします。

そしてこの三つ巴の中心にいるのがキム・グァンイル(イ・ジョンソク)です。まぁこの傍若無人ぶりが凄い。とはいえこの人も脚本の弱さを、この暴力性で補わなくてはならない点が可哀想な気もしました。やってる事は1mmも養護できませんけれど。

かなり複雑な脚本ではありますが、章立てているので、最後には分かるんです。

演技にも問題ないですし、アクションも悪くないと思いますが、やはり脚本が弱いと言わざるを得ないです。

韓国ノワール映画が好きな人にオススメ致します。