WOWOWの録画塩漬けしてたヤツを最近観たんですが、ぶっ飛ばされた。
フィリップユン。映画好きは絶対憶えておいた方が良い名前。
日本劇場未公開。WOWOWの放送が日本初というから驚き。香港には、世界にはまだまだ凄い才能が、いる。
関心を持ったのは大好きな王家衛作品でおなじみのクリストファードイルが撮影を手掛けていたからなんですが、それ以上にトリッキー且つハイレベルな語り口にヤられてしまった。
これだけ時系列がシャッフルされていると物語の羅針盤が狂って迷子になりそうだけれどそんな事も無く、散りばめられた人物やセリフ、シークエンスが鮮やかなモザイクを形作る。その手際が見事。
そして、その手立てのひとつとして確かにドイルのカメラも寄与している。
邦題や、実際の猟奇殺人事件をモデルにしていると聞くと、その過激さやエグさに引っ張られてしまいそうだけれど、監督の描き出したいのは其処では無く、ひとりの少女の危うい心の移ろいや周囲の人々の揺らぎなんじゃないだろうか。
映画の構成の特殊さも、少女の行き先を失った心行きを描くための必然である様に思う。
これがデビュー作というジェシーリーの儚げで危うい美しさがとにかく鮮烈。
フィルマークスのスコアが低いのは残念ですが、然もありなん。好き嫌いはかなり分かれる作品だから。自分は好き。次の監督作を密かに楽しみに待つ。
