近年、北アフリカや中東から地中海を漁船等に乗って欧州に渡る難民が急増してEUで政治問題化している。
この作品の舞台になっているドイツでも、予算や人手が圧倒的に不足していて難民の受け入れ態勢の整備に四苦八苦している。
本作は、日本と違って難民問題が身近にあるドイツならではの映画だと思うが、社会派的なアプローチではなく、庶民的な笑い一杯で描いていく。
そして難民問題をモチーフにしてはいるが、この作品で中心になっているのは難民の青年を受け入れたハートマン家の人々の物語。
ハートマン家は難民を受け入れられるぐらいだから、それなりに裕福なのだが、夫妻、長男とその子供、長女、家族夫々の関係がギクシャクしていて、進むべき道が見出せずに人生の迷子になっているように見える。
そんな状況を打破するかのように、妻であり母であるアンゲリカの難民受け入れ宣言で一家に大きな変化が訪れる。
生まれも育ちも、言語も文化も、人種も肌の色さえも違う難民の青年ディアロにハートマン家の人々は戸惑いながらも、この青年の純粋さや優しさに心を開いていく。
この作品は難民と受け入れた人々の単なる良い話にしないで、何故難民が生まれるのか、そして彼らを受け入れる人々ばかりではなく、彼らを偏見の目で見る人や役人、更に排除、排斥しようとする極右勢力の存在も映し出していく。
亡命申請でドイツに住みたいディアロの願いとは裏腹に、思わぬ大騒動が起きたりして物語は二転三転していく。
果たして彼らはどのような結末を迎えるのか?
家族が一堂に会したお正月、ある一家と難民の青年との触れ合いを描いた本作からは、笑いと涙と共に家族愛やその温もりが伝わって来ます。