Inagaquilala

のみとり侍のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

のみとり侍(2018年製作の映画)
3.6
物語の舞台は、田沼意次が老中として権勢を振るっていた時代。タイトルの「のみとり」とは、文字通り猫の蚤とりを生業とする人たちを指すが、その仕事の実は、猫の飼い主である女性たちにサービスをする、いまで言えば「ホスト」のような存在か。藩主の怒りに触れて、猫の「のみとり」をせよと命じられたエリート藩士・小林寛之進が、この作品の主人公だ。

監督は前作の「後妻業の女」で、優れたコメディ感覚を発揮した鶴橋康夫。主人公の小林寛之進に阿部寛を起用して、「テルマエ・ロマエ」のような路線を狙った時代劇コメディだ。「テルマエ・ロマエ」同様、阿部寛のからだを張った演技も見もののひとつだが、相手役となる寺島しのぶの一人二役の婀娜な演技も素晴らしい。

ただ、コメディとしては「後妻業の女」や「テルマエ・ロマエ」のほうが忌憚なく笑え、とくに作品の後半は、お家騒動も含んだ、侍社会の人間模様と町人たちの人情物となっていくため、やや残念な気もした。「のみとり」という特異な職業を題材に選んだからには、ここは徹底的にコメディに徹する手もあったのではないかとも感じた。とはいえ、時代劇としては、かなり異色な作品が出来上がったことは確か。主人公がこのまま「のみとり」のままなら、新しい阿部寛のシリーズができるのではないかとも思った。
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