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判決、ふたつの希望のmajiziのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0
些細な言い争いがきっかけで自分たちのコントロールを超えてしまい、国家問題にまで発展する物語。

舞台はレバノンのベイルート。

キリスト教徒のトニーと、パレスチナ人のヤーセルがアパートのバルコニーでの水漏れをめぐって言い争いを起こすうちに、対立は法的に持ち込まれる。

ヤーセルはパレスチナ難民なので、劣悪な労働条件のもと働いている。

トニーはそんなレバノンにいるパレスチナ難民に対して嫌悪感を持っている。


まったく折れないトニーと、難民であることや自分のやったことが立場的に不利と感じて法廷でもあまり口を割らないヤーセル。

そして法廷での争いも加速し、大きな社会問題になっていく。
まさかの大統領まで登場。

積み重なる歴史と、誰もが被害者にも加害者にもなりうるセンシティブな現在。

子供の頃から異教徒を敵視することを教えるのは間違いだとは思うけれど、そうならざるを得なかった彼らの過酷な経験や環境までは否定出来ないというジレンマ。

この作品の製作後、国家や政党から公開に圧力をかけられたというのは、パレスチナが“加害者”の過去を消したいため。

彼らの中には被害者で居続けることが都合が良いと考える人たちもいるのだろう。
でもそれは歴史を捻じ曲げる行為。

何より公開されて良かったし、邦題のとおり希望が見える作品でした。
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