るるびっち

判決、ふたつの希望のるるびっちのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.2
「ただ、謝罪だけが欲しかった」とチラシにあるが、そうだろうか?
レバノン人のトニーは、全然謝罪を受ける用意をしていない。
一方的な自分の正義こそ正しいと、知らしめたいだけだ。
強面で横柄な彼の態度では、彼の父親が言う通りトラブルを起こすだけだ。

実は、パレスチナ難民とレバノン人の民族間の根深い争いが背景にある。
二人の男が頑ななのも、互いの悲劇的な歴史に起因する。
そうしたことが裁判の中で次々明らかになる。スリリングでありながら、民族紛争の困難さを映し出した見事な内容だ。

しかし攻撃的で被害者意識を喚き散らす男も、
寡黙すぎる癖に頑固で協調性のない男も、
どちらも困った存在だ。彼らの家族や妻が一番災難ではないか。 
親父たちは男性ホルモンが過剰すぎる。世界平和には女性ホルモンを注射した方がいいのではないか? 
他者、特に立場が違い対立する他者を理解するのは難しい。

謝罪を声高に求める方は、実は謝罪を本当に受け入れる用意がない。
終盤、彼らに本当の理解と謝罪を受け入れる用意ができる。
そこが感動的。
クソ親父二人の喧嘩を通じて世界を見る。面白い映画だ。
見せて頂き、ロングライドさんありがとう。
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