ジョジー

判決、ふたつの希望のジョジーのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.3
第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたドラマ。社会派な作品はその国の政治的・宗教的な背景を知らないと置いてけぼりを喰らうことがあるので、チェックもしてなかった作品です。
パレスチナ問題はテレビのニュースで耳にすることはあっても、それほど関心を持ったことがなかったふとどき者です。映画を観るに当たって少しですがネットで勉強させてもらいました。ただ、付け焼刃な知識では計り知れない根深い問題なんだと思い知らされました。
建設現場で監督を務めるヤーセルはパレスチナ人、レバノン人のトニーと本当に些細なことで言い争いになり、トニーはヤーセルに謝罪を求めるのですが折り合いが着かず… 
たかが喧嘩のはずが、トニーが酷い言葉を浴びせたこともあり、ヤーセルは謝罪するつもりだったにもかかわらず暴力を振るってしまいます。ここから、個人対個人ではなく、国中を巻き込んだ法廷闘争へと発展。
トニーとヤーセル、ふたりとも本来は道に外れたことが嫌いで真面目なんだと思うんです、だから観ていて余計につらくなる…。裁判が進むにつれ、お互いの弁護士と自分たちとの想いのズレが生じたり、トニーの過去に何があったのかも分かってきて、やるせない気持ちになりました。対立しているはずのふたりの表情が少しずつ変化していくのも見どころ。
そして、弁護士対決はこの映画のもうひとつの見どころでしょうね。お互いにポンポン飛び出す言葉のやり取りに惹き込まれたのは事実です。ふたりの弁護士の関係はちょっとびっくりしましたけど。
裁判だけでなく、それぞれの家族の物語でもあるので、妻たちの気持ちを考えると心揺さぶられます。彼女たちは夫に放つ言葉は正論ばかりだったと思うし。
まだまだパレスチナ難民問題は解決の目途など立たない状態なのでしょうが、一人ひとりは同じ人間。この判決での希望が、もっと大きな希望につながればいいのにと祈るしかないです。とてもいい映画でした。観逃さなくて良かったです。
ジョジー

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