映画太郎

判決、ふたつの希望の映画太郎のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
3.8
レバノン内戦時代、民族的に対立関係にあったレバノン人(トニー)とパレスチナ難民(ヤーセル)の二人が、ちいさな諍いごとを発端に敵対する。裁判がはじまると、メディアが騒ぎ立て、民族代理戦争のように発展していくなか、当の本人たちは公判の場で、内戦に翻弄されてきたお互いの悲しい過去を知っていく。その過程で、少しずつ相手への理解が芽生えはじめ、やがて民族憎悪の感情を乗り越え、一対一の人間同士として歩み寄っていく。

二人が直接言葉を交わすシーンはほとんどない。だが、不器用ながらも誠実なやり方で、少しずつ心を通わせていく。そのやりとりが、とても渋くてカッコいい。民族という壁がなければ、二人はきっと似た者同士で、親友になれていたのかもしれない。

アラブ繋がりで調べてみたら、「目には目を歯に歯を」という言葉は、「やられたらやり返せ」という意味ではなく、倍返しのような無制限な報復合戦の拡大を防ぐためのものだなんだとか。判決前、トニーに対するヤーセルの挑発行為には、そんな意味も込められていたのかもしれない。侮辱には侮辱が返ってくる。でも、敬意には敬意が返ってくる。それが希望ある未来に繋がっていくのだ。