ShinTakeuchi

判決、ふたつの希望のShinTakeuchiのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
5.0
レバノンを舞台にした法廷劇。
隣国から逃げてきたパレスチナ難民と、キリスト教徒のレバノン人(レバノンで最も多いのはイスラム教徒だが、フランス統治の影響でキリスト教も多い)の、ちょっとした口論が裁判に発展し、やがて、社会を巻き込む騒動になっていく。

法廷劇と聞くと、退屈そうな印象もあったんだけど、意外にもエンターテイメント性は高い。テンポのいいストーリー運びと、メリハリの効いたショットによる演出は飽きさせない。

当然、中東固有の事情が個人のケンカにも影を落とす。
それぞれ主人公たちは、互いに殺し殺され、奪い奪われ、侵し侵されてきた、宗教的、民族的な背景を、否応無しに背負ってしまうのだ(直接は登場しないがユダヤ人=イスラエルの存在も意識される)。
ゆえに、状況はどんどん混沌としてくる。

映画としては、裁判の判決までを描いている。
しかし、単純ではない。
裁判だけで決着する話でもなく、主人公同士の法定外でのやりとりもある(とてもいいシーンだ)。

この「単純ではないこと」を描くのに、映画というフォーマットがとてもよく機能していると思う(特に長さと、裁判で主人公たちの過去に触れるという時間軸=歴史の扱い方の点で)。

主人公たちの演技も素晴らしい。
中高校生に教材として使うと良さそうだ。
ShinTakeuchi

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