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判決、ふたつの希望のmのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.8
全てにおいて圧倒的に巧い!まず脚本が猛烈に巧く、さらに演出・演技・撮影もハイレベル。

難民問題と過去の紛争、宗教や政治の様々な問題が2人の男の法廷劇の中に分かりやすく凝縮されている。尚且つ些細な所から始まる彼らの争いとその裏のドラマには諸問題に疎い自分のような観客にも響くエモーショナルさと開口の広さがある。
法廷劇としてのスリリングさも抜群、そうこの映画の凄い所はエンターテイメントとして圧倒的に面白い所だ。些細な口論が裁判に発展し、ある瞬間から一気に雪だるま式に事が大きくなっていく様もまた的確に表現されている。

監督は『テーマやメッセージを訴えるのではなく人間を描きたかった』と語っているが、人間ドラマを全世界の人々に伝わるように普遍的な形で描いた結果、テーマやメッセージもよりスムーズに広く観客に届くようになっているのが見事だった。

原告であるトニーは最初は乱暴であまり共感できない人間に思えるが、そんな彼の違う一面が少しずつ見えてきて全く違う印象へと変わっていくのが王道でまた巧み。トニーを演じるアデル・カラムもそうした見え方の変化を巧みに表現している。彼と敵対するヤーセル役のカメル・エル=バシャもまた実に巧い。あと話が変わりますが、トニーの妻役のリタ・ハーエクがとんでもなく美しい。
ベイルートにいたいと言う夫と他所に移りたいと言う妻、という両夫婦の共通項も色々示唆的。

ここに描かれている希望は現実の複雑さを思うとあくまで『希望』でしかないが、しかしそれでもこの希望がこうした普遍的な形で描かれた事には大きな価値がある。
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