パレスチナ問題をざっと予習しておくとより作品の理解が深まる。
主要人物のキャラクターがとにかく良い。
「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」とはHUNTER HUNTER の台詞だが、それぞれが何に対して怒るのかを掘り下げていくことでキャラクター造形が強くなっている。
トニーとシリーン夫妻の気持ちのすれ違いや、法廷で争うトニーとヤーセル二人の弁護人のそれぞれの思惑、それぞれのベクトルがすれ違うことで深みと複雑さを増していきつつも、最後は一つに収束していくエンターテイメント的な脚本の上手さもある。
人間ゆえに争ってしまうが、怒りを感じる人間同士だからこそ、怒りの原因は同じで、それを知ることで相手を赦すことができる。
ラストは綺麗すぎてややファンタジックでもあるが、現実のパレスチナ問題の頭の痛さを思うと、フィクションの中ではこう終わって良かったという安堵の余韻がある。