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グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブルのmomokaのレビュー・感想・評価

5.0
ドラン監督が恋しくなって、ついドキュメンタリー映画を観てしまいました…。

本作は、監督自身や、出演俳優、撮影監督、ディレクターなどの方々からのインタビューにより、ドラン監督という人物像に焦点が当てられていた。実際に、制作された映画のワンシーンが登場するので、より深い考察がてきたり、懐かしい音楽を聞くことが出来たり、また作品を再鑑賞してみたい気持ちに駆られた。

ドラン監督は「強い意志の力で戦い続ける戦士」であり、「映画は彼の人生だ」と人々は語る。
脚本、衣装、編集、予告編、字幕も担当するという、一切妥協しない映画制作への熱量。また、撮影前には数百枚の写真でビジュアルのコンセプトを共有するためのルックブックを作り、撮影監督とビジュアルを共有するという。それは、衣装や美術照明のニュアンス、すべての人物の髪型やメイクに関するものだといい、彼は映画を撮影する前にはファッション誌を山のように買い込むらしい。

また演技がしたくて彼は脚本を書いたというのも驚きだ。もともと子役であったが有名ではなく、独学で様々な作品から映画制作を学んでいったそうだ。共演者たちが語るには、彼は必ず撮影に入る前に音楽を聴かせて、感情を共有する。そして、自分ならどう感じて、どう演じるかを想像し、お互いをさらけ出して、アイデアを分かち合い、最高の化学反応が起こるように仕掛ける。
さらに、共演者のみならず、セリフがない場面では音楽を流しながら、撮影を行うらしい。そうすることで、カメラとダンスするように撮影ができ、映像の世界観が広がるそうだ。

そんな彼が中心となっているからこそ、現場は彼とスタッフ全員が映画の方向性を共有しており、誰もが心から彼を愛し、一緒に仕事をすることを楽しんでいるという。そして、それはまた監督自身が望んでいることであり、スタッフに満足して欲しいという思いを持ち続けているため、いつも彼の現場は最高の雰囲気であると語られていた。彼は、最高のチームでないと良い作品を作り上げることはできないということをしっかりと理解しており、だからこそ、チームをまとめるために頭を悩ませる。しっかりと、自分の確固たる意志を持ちながらも、周りへの配慮も決して欠かさない姿は誰もが決して容易にできることではなく、素晴らしいことであると感じた。

ドラン監督は、自分が作る映画の本質的な部分は、人々を笑わせることも大切だけれど、メッセージを送り、問いを投げかけるべきであり、自分が正しいと信じたことをやる信念を伝えて、毅然とした姿勢を示すことだと語る。また、映画制作を通して多くの人をまとめる彼だが、グループに属することは苦手だったという。しかし、映画制作という自分の進むべき道を通して、本物の仲間が分かったと、家族を作っているんだと述べており、仲間への愛が伝わってきた。

ドラン監督の才能や情熱に溢れる、エネルギッシュな姿には、次回作も凄いものを世に送り届けてくれるのではないかと予感せずにはいられない。一人の人間として彼の様々な思いに触れることができて、とても興味深かった。
グザヴィエ・ドランが好きな方には、必見のドキュメンタリー!! そうではない方も、映画制作がこうして行われていくのかと、学べる一本にもなりそう✨

余談になるが、今まで彼の表情やセリフなどに注目しすぎて、あまり感じたことがなかったが、本作を見て、とてつもなくハンサムだったということにやっと気づいた…🤦🏻‍♀️笑
また、彼は『Titanic』を完璧だと称していて、かなり影響を受けた作品であるらしい。再鑑賞してみようかな💭
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