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グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブルのmisakiのレビュー・感想・評価

4.5
先日モントリオールへ行ってきました!
そして「I killed my mother / j’ai tué ma mère」のロケ地を訪れてきました!

ロケ地はいわゆるモントリオールの観光地ではなく、メトロで川を渡ったロンゲールという街で、あの作品を見た方はわかると思いますが、ただの道とかただの橋の下なんです。
だけどその場に立てたという事に果てしない感動と興奮であの瞬間の自分、ハタから見たら絶対気持ち悪かっただろうなという自覚あります笑
人も疎らにしかいなくて、車しか通ってない本当に何もない場所で、そこで写真を撮ってること自体ちょっと異常だった気もします。

本当はそこまで行ったからには他の作品のロケ地(mommyのスケボーのシーンとか)も訪れたかったのですが、少し遠かったのと1人だったので戻って来られなくなる不安があったのでマイマザーのみにしました。
でももうそれだけでも物凄く満足のできるいい旅になりました!
というかこれきっかけでロケ地巡りがクセになりそう...


前置きが長くなりましたが、ここから本作のレビュー。
旅行前に観て、旅行前にレビュー書いたのでいきなり口調変わりますがすいません。
しかも観賞直後、興奮冷めやらぬまま書いたのですっごく長いです。。


あーもう、ずっと見ていたい。

ドランと仕事をしてきた俳優や撮影監督やプロデューサーやらが彼について語るのだけど、みんなドランの事を称賛してる。
それは彼のドキュメンタリーだから当たり前かもしれないけど、そこにお世辞は一切感じられない。
みんな心の底から彼の才能に圧倒されて、その素晴らしさを一身に語ってる。


ドランは何かを創り出す時に、彼の頭の中にはその何かがかなり具体的に描かれていて、だから辿り着きたい場所が明確で、実現する為に今何が必要なのかがはっきりわかってる。

迷いがない訳ではないけど、映画を誰かに学んだわけではないのに、こんなにもやるべき事がはっきりとわかっていのはなんでなの?と思わざるを得ない。

衣装を考える時にファッション雑誌を山の様に買ってきて、目を通して気になったものは破いて冊子にまとめる。
衣装に関して縫う以外のことは全てやる。
何においても、どこまでもストイック。


今まで、彼はポジティブな性格だと個人的に勝手に思い込んでいたけど、意外とネガティブな一面も見えて驚く。

映画監督としてまだ若いのにこんなにもハイペースで作っているのは“今この作品を撮らなきゃ死んでしまうから”。

冗談を含んだ発言かもしれないけど、結構本気でそう考えてるらしく、3年後の未来はある程度予想できるけど、20年後なんてどうなってるかわからなくて、もしかしたら核戦争が起きてしまうかもしれないし、地殻プレート挟まって死んでしまうかもしれないと考えてる。

20年後の未来を描ける人なんてそういないだろうけど、こんなことを考えてしまうのはドランだけだと思う。
ネガティブ思考でさえイマジネーションが豊か。


あともう一つ驚いたのは、彼は子役としてそこそこの知名度があったと思っていたけど、そうではないらしい。
そう考えると本当に監督の才能だけでここまで有名になったということ。

17歳の時に書き上げた「j’ai tué ma mère」
配給会社との契約が打ち切られ資金がない中、アパートを売り、それまでの吹替で稼いだお金を注ぎ込んだ。(ドランはハリーポッターのロンやトワイライトのジェイコブのケベックフランス語の吹替を担当していた。)

それを作る前からカンヌに出品すると言い切れる自信。
それは彼の頭の中には明確な完成形の作品が既に出来上がっていたからなんだろう。
そして有言実行してしまう凄さ。


あと、単純に頭がいい。
「タイタニック」をドランが熱く語るシーンがあるのだけど、セリフの1つ1つ、場面が切り替わるカットの瞬間、細かな描写まで頭に入っていてビビる。


こんなにも今突っ走ってたら、いつか突然燃え尽きてしまいそうで怖い。

ジョンFドノバンからハリウッド進出らしいけど、それは活躍の場が広がって嬉しい事だけど、どうかどうか潰れないで欲しい。

願わくばそうならないで欲しい。
彼の作品を見続けていたい。
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