TAK44マグナム

アナーキー:無法集団のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

アナーキー:無法集団(2017年製作の映画)
3.5
あ、おい、あんた!

そう、あんただよ!
ちょいと隣で飲んでいいか?一杯奢るからよ。
な〜に、そんなに訝しがるこたぁねえ。
あんたがオレが観る映画によく出てる俳優によく似ているからよ、
ついつい声をかけちまったってわけさ。

何も怪しいもんじゃねえ、ただのトラックドライバーさ。
この街には仕事の途中で寄っただけ、あとニ、三杯飲んだらトラックで寝て、朝には街を出るんだ。
ただ、誰かと話をしたくってな・・・付き合ってくれるかい?

いや、ほんとに似ているぜ?
・・・あ?誰にだって?
だから、ノア・セガンだよ、セガン!
知らねぇのか?ブルース・ウィルスがトチ狂うヤツにも出てたぜ?
オレはな、ノア・セガンの死にっぷりが好きでなぁ。
・・・そう、あいつが出てくると大概死ぬんだよ、笑えるだろ?
誰だっけ・・・ほら・・・そうだ、ショーン・ビーン!
ショーン・ビーンもよく死ぬじゃねえか。
だからよ、ノア・セガンも頑張って死に芸磨けば第二のショーン・ビーンになれるんじゃねえかなって密かに応援してやってるってわけよ。

それにしてもあんた似てるなぁ・・・
まあ、まさかこんな田舎町の場末のバーで女もなしに飲んでるわきゃないもんな!
一応、俳優様だからよ、あいつも・・・

それでよ、昨日みた映画にもノア・セガンが出てたのよ。
なんかバーテンダーの女に惚れた金持ちのボンボンがナンパもロクに出来なくてよ、なんとかならねえかと声をかけたのがノア・セガンってわけよ。
ノア・セガンの役はよ、ろくでもねえチンピラなんだよな。
で、金に釣られたノア・セガンはボンボンとバーテンダーをくっつけるために計画を練るんだよ。

どんな計画かだって?
それがよ、笑っちまうじゃねえか。
まるでマンガだよ、マンガでよく使う手なんだよ。
つまり、ノア・セガンと仲間たちが女に悪さして、それをボンボンが助ける。すると女はボンボンに惚れてハッピーエンド!って寸法だ。
どうよ、今時これはないだろ?
笑うしかなかったぜ、本気でそんな話の映画を撮ってんだから。

でよ、そこまではよくあるラブコメだろ?
それが、女を拉致ってからはホラーになっちまうんだよな、何故か!
よく見張ってないもんだからよ、すぐに逃げられちまって、それを捕まえようとすると反撃されちまって。
けっこう気が強い女なんだよ。ちょいと面長なのが気になったが中々の美人でよ!
なのに、オッパイとか見せないのはダメダメだったな。

とにかくな、すったもんだの挙句にノア・セガンの仲間が死んじまうんだよ。
なんで仲間が死ぬんだよ?そいつはどうでもいいんだよ!
オレはノア・セガンがだらしなく死ぬところを見たいんだよ!
・・・って、思わずツッコんじまったぜ、まったく。

その後も色々とあってよ、待てど暮せどノア・セガンが死なずに、どんどん仲間がおっ死んでゆくのを見せられるわけさ。
オレは叫んだね!
神様、はやくノア・セガンを殺してくださいって!

・・・まあ、これでもオレは我慢強いほうなんでね、それでも観続けたさ。いつの間にかボトルが空になっちまってた。
だんだんと何を観ているのか、よく分からなくなっちまって・・・
とにかくノア・セガンが死ぬところを見てえ!って、早送りしようとしたらもうラスト付近でよ。
なんちゅうんだ?どんでん返しってか?
ノア・セガンの本当の目的ってのが分かるんだけどな、はっきり言っ
てオレなんかが観ていてもバレバレでよ、いまいち驚けなかったぜ。
まあ、そこらへんはあんま巧くない感じだったな。

でもよ、どんどん雲行きが怪しくなってゆくのは面白かったな!
なんでこーなる?って、ノア・セガンが困ってるのは最高だった!
困ったまんま死ねば良かったんだけどな!

・・・あ?それでどうなったのかって?
ボンボンが女を、ノア・セガンが金をっていけば万事オッケーだったんだろうけどよ、全然そんなことにはならなくてな。
最後は殺し合いよ!
おお、これでノア・セガンもオシマイか!ってなるだろ?
誰だってなるさ!世界中の70億人がノア・セガンが死んじまうのを今か今かと待ち構えているんだよ!

・・・勘違いすんじゃねえよ?
リアルな話じゃなくて、映画の話だかんな?
映画の中でノア・セガンが酷え目にあうのをみたいだけだかんな?

とにかくよ、オチが普通すぎて拍子抜けだったぜ。
そこまでホラーだったのが急に胸キュン☆に戻っちまってよ。
インパクトも切れ味もなくてな、オチが大事だってのに勿体無いねぇな〜・・・なんて思っちまった。
それもこれも、みんなノア・セガンのせいだろ!
あいつが中途半端だからいけねえんだよ!
最後、意味もなく蜂の巣にでもなってくれりゃ最高だったんだけどな・・・

う〜ん、よくわからねえけどよ、これ撮った監督がロマンチストだったんじゃねえかなぁ・・・?
オレはそんなのどうでもいいんだけどな。
ノア・セガンがミンチにでもなってくれれば朝までぐっすりと眠れる、ただそれだけなのによ。

まあ、キャラは良かったんじゃねえか?
いちいちイライラさせてくれるノア・セガンのカノジョやら、忍者に憧れてる塩っぱいヤツやら・・・どいつもこいつもマヌケで、なんだか憎めない奴らだったなぁ・・・

・・・ん?なんて映画だって?
なんだったかな・・・
そうだ、たしか「GET THE GIRL」だ、つまりナンパだよ、ナンパ!
ジャパンだとタイトルが違うんだって、レンタル屋で言ってたな。
アナーキーがどうとかこうとかってタイトルにされちまってるらしいぞ?アナーキーじゃなくって、ただのバカがバカっぽく死んじまう映画だったけどな!

・・・おっ、いけねえ、いけねえ。
お喋りがすぎたようだぜ・・・飲み過ぎもな。
ぼちぼち、トラックに戻って寝ることにするわ。
そんじゃあんたも夜更かしはやめてウチへ帰んな。
そうそう、帰り道は気をつけなよ?
なにしろノア・セガンに似ているからよ、何が起こっても不思議じゃねえしな!

またどこかで会おうぜ、ノア・セガン!





P.S.

レンタル屋の棚にまたノア・セガンを見つけたぜ!
「デッドガール」ってタイトルだ。
今回は死ぬんだろうな?頼むぜ、まったく・・・・・
あれ?そう言えば前にも「デッドガール」ってのに出てて死んでたろ、あいつ・・・?
うん??
あ、「デッドガール」違いじゃねえか!
ジャパンのタイトルかよ!紛らわしいんだよ!

・・・・・とりあえず借りとくか。
今度こそちゃんと死ねよ、ノア・セガン!



レンタルDVDにて