ケンヤム

ジョニーは行方不明/台北暮色のケンヤムのレビュー・感想・評価

4.8
そこに佇むこと、止まることを肯定してくれる映画。
動いてるものが一瞬止まって見える時がある。それなら、その次の一瞬は?動いていると言えるのか。
この瞬間が永遠にと思える今がそこに佇んでいる時、欠落が肯定され、過去も未来も関係なくなる。
私たちはあの楽しかった時間を永遠にすることはできないから、記憶からそれを呼び起こして反芻することしかできない。
けれど、その反芻は時間や空間や運動を乗り越え私たちに迫ってくる。
動いているものは止まるし、止まっているものは動く。
赤いスズキのワゴンカーは、ここではないどこかに連れて行ってくれはしない。
運動を否定するかのように、エンストする。
それならそこに座り込んで、笑うしかないではないか。
欠落を埋めることなく、それをまるっきり受け入れて、優しさと寂しさの同居する台北という街に佇み続ける彼らを私たちは笑うことはできない。
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