つっきー

ジョニーは行方不明/台北暮色のつっきーのレビュー・感想・評価

3.8
冒頭 光の入り乱れる幻視のような画からスタート

地下鉄の中でLINEやケータイの着信音 通知オンの入り乱れる音
ここでの多すぎるくらいの雑音が終盤の娘にかける電話が地下鉄の音にかき消されるシーンとつながる
聞きたくもない音ならいくらでも聞こえるのに本当に聞きたい聞かせたい音は届かない

鳥がいなくなったシーン
外に出るとぐっとカメラが引く 下がる
鳥がいなくなったことで世界がぐんと広がるような 恐ろしさを持って世界が開けるような

屋根の上のシーン
天上世界のような印象 地に足の着いていないような
屋根の上だから当たり前なんだけど

雨漏りを直す彼と会話するシーン
「人生即別離」の言葉を思い出す
すれちがってこんにちは、仲良くなってさようなら
どこかそんな印象を抱く

バナナ食べるおばあさんのシーン、
団地の一室で怒る誕生日のお父さんのシーン
侯孝賢の文脈で「老い」を描くのが本当に上手い
そこに嫌悪感も哀れみも肯定もなく、ただ老いがあるがまま写される
ある意味でそれは真摯でありながら酷でもある

怒った父親が一瞬リビングに1人残されるシーン
父親は瞬間的に硬直して画面が止まる
それこそが老いである、とでも言おうとしているかのようなカット

コンビニのシーン、本当に誰かが何かを語ろうとするときの空気 やっぱり僕はあれが好きだ。
涙しそうになる
そして走る
誘導カカシの無機質と上着を脱ぎ捨てる彼女の「生」であり「性」
ものすごい速度で通り過ぎる高速道路の車たち 死の影
そして生死を分ける川の上 その橋の上

水たまりのカット 本当に美しい
鳥のいる様をただ写すシーンも素晴らしい

不在の「ジョニー」と「兄」が画面にもたらすもの
うしろに長蛇の渋滞列をこしらえながら修理の業者を待つ彼らの喜劇チックな会話
止まることなく流れ続ける、血管みたいな台北の車たち


音響 ジリジリと心を焦がすような重低音が印象的だった

男の子の母親が物思いをやかんの音でかき消されるシーン
生活が僕らをこちら側に引き戻す


ラスト エンドロールの後新聞の切り抜きを眺める彼は何を探していたんだろうか
あの録音はなんだろう

ナルバリッチは余計
音量からして合ってなかった
つっきー

つっきー