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悲しみに、こんにちはのyuienのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
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優しい色の夏、ほろ苦い味の悲しみ
飾らない素朴な日常の中で展開される、ありのままの喜怒哀楽

光が柔らかく、透き通っていて、あらゆる感情をそっと包み込む。すべてがナチュラルでびっくりするほど生き生きしていた。

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スペインの夏。1993年。
それは少女・フリダ(ないしカリラ・シモン監督)の特別で、大切なひと夏。

田舎の長閑な空気。風光明媚な景色の中で流れる、気怠く緩やかな時間。
一見なんの変哲も無い毎日で、彼女は子どもから少女へと少しずつ前に進む。ときに癇癪を起こして、ときに挫折を味わって。

ハシバミ色の瞳をしたぽっこりお腹のフリダちゃんはいつも寂しそうで不機嫌な面持ちだけれど、ときどき破顔した表情は屈託無く、とても輝いていた。

お芝居しているとは微塵も感じさせず、まるでフリダちゃんの日常をそのまんまフィルムに焼き付けたようで 映画を観ていることを忘れてしまいそうだった。わたしはいま、等身大な 6歳の女の子を取り巻く生活を至近距離で眺めているんだ、っていう感覚。

全体を通して フラットで、流れはゆっくりとしているけれど、決して間延びしているわけではなく、カメラは緊密に人物を捉えて、個々の中の自然を引き出していた。それがとても居心地がよい。

突発的な涙の後に訪れるあたたかい暗転
きっと、悲しみは忘却するものではなく、受け入れるものなんだよね。
痛みを知って、彼女はひとまわり成長してゆくんだろう。
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