ノラネコの呑んで観るシネマ

悲しみに、こんにちはのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
4.5
1993年夏のスペイン。
この頃猛威を振るっていた“ある病気”で両親を失った、少女フリダの物語。
叔母夫婦に引き取られた彼女は、献身的な愛を受ける。
それでも、甘やかされて育った思春期前の少女にとっては、やはりそこは居心地の悪い他人の家に過ぎないのだ。
彼らが家族になるためには、血の繋がり以上にお互いを知る時間が必要。
カルラ・シモン監督の自伝的作品らしいが、主人公のフリダを演じるライア・アルティガスはじめ子供たちが素晴らしい。
おそろしくナチュラルな演技も凄いが、それを引き出した演出も見事だ。
基本フリダと従姉妹のアナが遊んでいるだけの描写が大半なのだが、まとわりつく生と死の香りに全く目が離せない。
これはカタルーニャの緑豊かな夏を背景に、大きな喪失を抱えた少女が命の秘密を知り、“本当の安心”を見つけるまでを、みずみずしく描いた秀作だ。