ちろる

悲しみに、こんにちはのちろるのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
4.2
ここ最近は本当どうやって撮影してるの?っていう子役の演技が印象的な作品に出会う事が多い。
「フロリダ プロジェクト」のムーニーに驚かされたのもつかの間、今回はこのフリダとアナちゃんのあまりにもナチュラルすぎる演技に圧倒されて、もう私は途中からドキュメンタリーを観ているのかも、と勝手に脳内変換されてしまうほどになった。
フリダの叔父夫婦が大きな包容力で彼女を受け入れる姿も教科書みたいな素晴らしさじゃなくて、フリダを手放しで実の子のように愛したいのに時に葛藤したり、自分の実の娘アナを大事に思うあまりフリダを強く叱ってしまったりする。
だからそんな叔母さんや叔父さんのことを考えるだけで胸がキリッと痛んで泣けてくるし、フリダの方も上手く自分の想いが伝えられなくて妹アナに少し残酷ないじわるしたり、いけない嘘をついちゃったり、プチ家出をしたりする。
複雑な少女心に自分の幼い頃と重ねてしまって私は途中からフリダに乗り移った。
生と死を受け入れるにはあまりにも幼すぎるフリダが母親とのサヨナラを受け入れて、孤独感にもがきながら必死に自分の居場所をみつけだそうとする姿を見て思いっきりフリダを抱きしめたくなった。

因みにこの作品はフリダの視点から描かれているため、フリダが何故祖母たちのいるバルセロナからなぜ叔父の住む田舎のカタルーニャに引っ越したのかははっきりとは説明されない。
これはあくまでも私の推測だけど、恐らくエイズ感染により亡くなった両親の娘であるフリダが当時住んでいたバルセロナで生きにくくなってしまったという遣る瀬無い事情があったのかもしれない。
そんな事を考えるとただ単純に両親を亡くした少女の瑞々しい成長物語としてだけでは終わらない、当時のエイズに対する世間の無知と世知がない差別感情についてまで改めて考えてしまう作品でもありました。
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