ろ

悲しみに、こんにちはのろのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
4.8

きらきらひかる、かなしみのたからばこ


2017年6月「インサイドヘッド」にはじまる かなしみを巡る旅は「ミスターロンリー」「ベイマックス」「モダンタイムス」「セントオブウーマン」そして「夏の遊び」を経て、この映画に辿り着いた。
一つとして同じものはない かなしみに触れるたび、「ああこれもわたしだ、あれもわたしだ」とホッとする。その片隅で、孤独は深まってゆく。


花火は鮮やかに夜空に咲いて、フリダを照らす。
大人たちが慌ただしく荷造りをしている。
ママが亡くなったというのに、フリダはどこかに涙を忘れてきてしまった。


「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである」(人生論ノート/三木清)


友だちじゃない子どもたちと鬼ごっこをするとき。
叔父と叔母が自分じゃなく、いとこのアナちゃんに微笑みかけるとき。
ひとつ、またひとつ、かなしみが打ち寄せる。

町の広場で催されたお祭り。
ステージで演奏される音楽にあわせて楽しそうな大人たち。
彼らに透けて映るのは、ひとりベンチに座るフリダ。
視線の先には幸せそうに踊る叔父夫婦。
ああ、わたしは、あの輪の中に入ることができない。


味わったことのある孤独がダイレクトに突き刺さって、わたしを放そうとしない。
フリダがお人形をギュッと抱きしめるとき、森でマリア像を見つめるとき、あたたかい涙が頬を伝いました。



人生論ノート・孤独についての章を「孤独は最も深い愛に根差している。そこに孤独の実在性がある。」と締めくくった三木さんの気持ち、ようやく分かった気がします。
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