うめまつ

悲しみに、こんにちはのうめまつのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
4.2
作り物だと感じる部分がほぼなかった。フリダのまだ新品同様の瞳から放たれる深い悲しみの色はなんだろう。幾千も眠れない夜を過ごしたような大人びた表情はなんだろう。ちいさな身体に持て余した寄る辺ない孤独は一体何処から来るんだろう。そのすべてが演技だなんてどうしても思えなくて、1993年の夏の記憶にすっぽりと包まれているような錯覚に陥った。水の中みたいに雑音は遮断されてフリダの心の声だけが届く。

すべてを元に戻したいだけなのに、その方法がわからないから急に拗ねたり、嘘を吐いたり、いじわるしたりしてしまう。新しい妹に注がれる隔たりのない愛情が羨ましい。あまりに遠くに来てしまった。不自由でないことが自由だとは限らない。優しくされることと愛されることは違う。でも靴紐を結んでもらうと大切にされてるような気がする。

花火越しのバイバイ、森の中のマリア像、青いパジャマ、ご褒美アイス、足に足を乗せるダンス。フリダの憂いを帯びた表情に似合わないぽんぽこりんのお腹が可愛くて、まだこんなに幼いんだと思う度に目の前がぼやけた。思い切り泣ける場所ができたのは幸せなことだよね。泣き疲れて眠ったら新しい朝が来て、きっとまたひとつ家族になれるね。
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