けーはち

悲しみに、こんにちはのけーはちのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
3.7
両親を亡くした6歳の少女がおじの家に引き取られ、新たな家族とうちとけるまでの一夏のドラマ。原題の直訳は「夏、1993」で、カルラ・シモンというスペインの'86年生まれの新人監督の長編第1作にして半自伝的作品であるようだ。

実親が若くして肺炎で死没し、彼女もまたウィルス感染の疑いがあって、周囲の人たちも彼女の出血を恐れるという描写がある(病名は明かされないがAIDS)が、検査の結果健康そのものと診断され、その話はそこでおしまい。伏線でも何でもない実話ゆえのノイズだが、そういう枝葉が“実話らしさ”を生むディテールでもある。本作は監督の幼少期の実体験に基づくそういう細やかな人生のニュアンスたっぷりの少女映画でもある。何せ徹頭徹尾6歳の主人公目線で、主要人物はおじ夫婦と3歳ぐらいの従姉妹(おじ夫婦の子)。よくこの年代の少女を長時間自然の中でこれほど瑞々しくのびのびと撮影できたものだと感心するし、無邪気さ、可愛らしさだけではなく、厄介さもズルさも様々なものが入り混じった複雑な感情も驚くほど自然に活写されているのが観どころだ。