回想シーンでご飯3杯いける

悲しみに、こんにちはの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
3.8
魅力的な子役が出てくる映画は沢山あるが、いかにも大人が書いた脚本、言い換えると、大人が子供に言って欲しいお涙頂戴な台詞で感動させる映画が多いのも実情。そんな中で本作の主人公フリダと、その従妹アナは、本当に自然体で、子供が持つ純粋さと悪魔性を見事に表現している。これは本人の力だけじゃなく、監督/脚本を含めて、作品の方向性がしっかり定まっている証拠。エンドロールに「母に捧ぐ」というメッセージが出てくるので、監督の自伝的な要素も含まれているのだろう。

病気で両親を亡くしたフリダが叔父夫婦の元に預けられ暮らすという話で、実の親ではない叔父・叔母に嫌われたくないという気持ちが、時として歪な形で表れ、トラブルを巻き起こしてしまう様子を、是枝監督作品にも通じるナチュラルな演出で描いている。子供が大人に甘えたい時って、確かにこういうもの。いつも可愛いらしいだけではなく、本人さえコントロールできない感情は、時にモンスターとして表出するのだ。

荒井由美辺りの'70年代フォークを思わせる邦題も良いが、英題「SUMMER1993」のままでも良かったと思う。