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グレタ GRETAのhorahukiのレビュー・感想・評価

グレタ GRETA(2018年製作の映画)
3.9
2つの領域の狭間にいる主人公が抱える葛藤。

ニールジョーダン監督の作品はまだ4作しか見てないのですが、どれにも共通してそれが描かれているように思う。例えば『狼の血族』では少女と大人の女性の狭間にいる主人公を性の目覚めという切り口で描いていたし、『ビザンチウム』では旧来的価値観という観点での過去と未来の狭間にいる主人公を描いていた。

そしてそれは本作でも同様。本作は、少女と大人の女性の狭間そして捨て去るべき過去と手にすべき未来の狭間にある主人公の葛藤をグレタという存在を通して描いている。

主人公のフランシスは母親を亡くし、その喪失感を埋められないまま暮らしてる。そんなフランシスがグレタと出会うことで互いに惹かれていくのですが、罠を張られていたとはいえ、グレタを引き寄せたのはフランシス自身。年配の女性を感じさせるアイテムとしてハンドバッグを配置し、そこに母親を見出していくわけで、母親の亡霊としてのグレタがフランシスを今いる狭間から過去なり少女なりへと引き摺り込もうとする。

このグレタの見せ方が非常に面白く、サイコスリラーでありながら『回転』を意識した境界線の向こう側に佇む霊のような恐怖演出を多用している。だからそういった意味では『ハロウィン』に近い。あちらも人には伏せてる精神面での欲求がマイケルを呼び寄せたわけだけど、本作でも友人のエリカの前では隠してる精神的な欲求がグレタを呼び寄せることになるから対象と動機は違えども構造の点でも似てる。ジョーダン監督は、過去のサイコスリラーの名作を参考にした作品として多数挙げていましたが、案外このあたりからもヒントを得てるのかなと感じた。

そして、童話的な寓話が好きなんだなっていうのも改めて実感。サイコパスに狙われるというありきたりなスリラーの皮を被ってはいるけれど、現実ではあり得ないような能動的な行動によって彼方の世界へと入り込んでしまうというスタート地点が既に童話的で、実際にウサギ穴ではないけれど彼方への扉として本作では印象的に門が登場する。さらには、親から離れたところで罠によって魔女に異界(魔女の家)へと誘われるのは『ヘンゼルとグレーテル』のようでもある。あの空間はまさに子どもとしての象徴だったわけだし、不自然なほど当事者以外の助けを得られないのもこの辺りにしっかりと意味を見いだせる。

だから、ジョーダン監督は昔から一貫して近似のテーマを描いてきてるんだなって思ったし、嘘と真実という点でも前作『ビザンチウム』と同じ扱い方をしていてそこも面白く感じた。嘘では過去を切り離せないわけですわね。もちろんグレタと対になる未来の象徴も出てくるのですが、その配置は安易であるとはいえ、燻り続ける過去からの誘惑が崩壊の芽として今後もついて回るのだということを暗示させるあたり抜かりないなって思った。

そんで何よりイザベルユペールさんのイカレ演技が最高っすわ。なんなんあのステップ。本人の動きもそうなんだけど、見せ方、切り取り方が秀逸過ぎて、アレ見れただけでも価値ありますわ。あんまり評価良くない作品だけど、私はめちゃ好き!