小松屋たから

グレタ GRETAの小松屋たからのレビュー・感想・評価

グレタ GRETA(2018年製作の映画)
3.8
正直、観てる間は、結構、怖かった・・

もちろん、あとから振り返ると、「ああすればよかったのに」「こうやったら助かったじゃん」「いくらなんでもそんなことしたらバレるだろう」「あそこに記録が残ってるよ」とか、突っ込みどころがあまりにたくさんあるし、キャラクターも「間違いなくやばい人」「行ったらダメに決まってるところにわざわざ行く人」「いかにもやられ役の人」等々、いわゆる「テンプレ」ばかり。ストーリーも、出発点以外はとびぬけて目新しいこともなく「B級的」と言われても仕方がない作品。

でも、繰り返しになるが、観ている間は本当に怖かった。

これはやっぱり、役者陣の力だろうなと思う。イザベル・ユペールは立ってるだけで恐ろしいのにどこか可愛げ、哀れさもある。クロエ・グレース・モリッツもかつてヒット・ガールだったとは思えないほど(笑)無防備で不注意な女の子を巧みに演じているし、頼りになり過ぎる友達役のマイカ・モンローも、今まで観た中で一番のはまり役だったかも。

こういう隣人スリラー系の映画って、演じている人がどれくらい真剣かつ楽しんで役に臨んでいるかがすべてで、照れや、恥じらいが少しでも見えたら白ける。でも、この3人からはそういった隙が感じられなかったので、スクリーンから伝わる圧迫感が凄くて、時に息ができないほどだった。特にイザベル・ユペールにはストーリーの凡庸さをすべて覆い隠すオスカー、セザール賞級の役者の凄み、魂というものを存分に見せつけられた。

ただ、こういった事件は国内外で実際に起きていたりもしていて、決して荒唐無稽だと笑い飛ばすこともできない題材だし、往年のファンの方々からはものすごく否定されそうな意見だけれど、日本でも大女優、例えば、吉永小百合さんが、「ちょっと良い話」ばかりでなく、イザベル・ユペールぐらいの覚悟でこの手の作品にも挑んでくれたら、邦画の創作の幅が劇的に拡大するんじゃないかと思った。