松井の天井直撃ホームラン

劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

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☆☆☆★★

ドラマ版は未見。

作品中に描かれる、幾つかのエピソードは素晴らしいのだが。色々な意味で、残念な印象しか湧いて来ないのが勿体ない。

冒頭から約5分程度のドラマ版でのハイライト映像が流れる。
ドラマ版を見ていたファンならば、直ぐに分かる映像ばかりなのだろうが。ドラマ版を未見の此方としては、そのどれもが(当たり前だけれど)全く何が何やらさっぱり分からない。
一応はドラマ版を未見の人にも分かる様にとの、配慮の気持ちは少なからず有るのだろうけど…(´-`)

冒頭の救命場面から関連して行く、大筋のエピソードとしては3つなのだろうか?

《結婚する女、結婚出来ない女、結婚したくない女》

この中では、最初に入るエピソードだけで約50分近くを費やしており、1番力を注いでいる(風に見える)
実際に周囲の観客からはすすり泣く声(音)が聞こえて来た事からして、かなり共感を(特に女性からは)呼ぶエピソードになっている。
勿論、患者と看護士として出会ったこの2人は、お互いを合わせ鏡の様な存在として描いていて、最終的にエンディングへと繋がっていく。
時々毒を吐く彼女は、本音を決して言わずに。この関係性をずっと側から見つめている。

しかし、一点してこの空気を切り裂く様な、救命事故へと切り替わり。このエピソード自体が一気に収束してしまう。

《子供は親を選べない》

出動した先には重傷の男性とその息子。
前のエピソードにて何回も登場していた母親とその娘。この2つのエピソードがシンクロして行くのかと思いきや…。
父親と息子のエピソードは、山Pの存在と「まさか?」と思わせる出来事によって、全て掻き消されてしまう。

本来ならば、この2つはシンクロし、親と子の確執は新たなる絆として観客へと提示されて行く筈だったのでは?…と思ったのだが。残念ながらシンクロするどころか、この2つのエピソードが上手い具合に重なり合う事にはならない。
それどころか、散々【やり過ぎる】かたせ梨乃の演技が兎にも角にもつくづくで、全くもってスクリーンを観ていて違和感だらけなのが(-.-;)
加えて、主人公で有る筈の山Pは一旦退場を余儀なくされてしまう。

《臓器移植/命の継承・人から人への継承》

ドラマ版のファンならば衝撃を受けるであろうこの展開。
山Pは母親と確執を持つ彼女を助けた為に…そう見えたのだが!
何故そんな展開になったのか?
この後、母親は突然に改心する。

何故?

もしも山Pではなく彼女の方が…だったならば?
その姿を見た母親は?…そうだったならば合点がいく話なのだけれど。

再度考える。では何故山Pは?

脳死判定の子を持つ親と、それを受けた親とのドラマ。
と、なるとその相手は山Pなのか?…そう考えてしまうのは至極当然!

ならんのよ!そんなに都合の良い話には(゚ω゚)
だって医師なんだもの。優先順位が上がる訳なんて無いし。第1そんな事になってしまえば、シリーズ即刻終了〜…ですよね〜!
フジが有力コンテンツを簡単に切り捨てる訳無いもの(-_-)

だから…でもないだろうが、その時に椎名桔平が!
おそらく、シリーズのファンには合点がいく話なんでしょうね。此方は全く知らない話だったので、「あららら!何と都合の良い!」…と、思ってしまったが(^^;

こうして、その重さ・尊さを示す命の継承のドラマは中途半端なままで終了する。代わりと言って良いのか、話の展開は人から人への継承へとシフトして行く。

彼女は絶えず毒を吐く。自分第1のスタンスを崩さない。しかし誰よりも早く周りを観察しては、「ほっとけない!」…とばかりに、口を挟む。

この辺りから、一旦退場してしまう山Pよりも。ひょっとしたら戸田恵梨香が本当の主人公なんじゃないのか?と、ついつい考えてしまう。
ジャニーズの彼とは先輩後輩として。比嘉・浅利やガッキーとは(はっきり言って、詳しい関係性は分からないのだけれど!)同僚で有り。医師と看護士としての信頼関係等として。
実は彼女を通して様々なドラマが生まれている様に見える。
但しこれは。今回の劇場版だけを観ただけの、薄い感想にしか過ぎないが…。

最後に一旦退場していた山Pが再登場。
結婚に関するエピソードは(おそらくドラマ版のファンから見て)観客の思い描く様なハッピーエンドとなり結実する。


ここから先は、山Pファンにとって怒りしか湧いて来ないであろう毒を吐くので。山Pファンの人。血圧が高めな人は出来れば読まない事をオススメしますm(_ _)m

作品中に於いて山Pは、ちょくちょく(名言とまでは行かないが!)重要な台詞を言う。
だが一旦退場していた事実から。特に結婚式での言葉等は、その台詞自体に重みが全然無くなってしまっている。
これは主人公の台詞としては実に痛い。

そしてはっきりと書きますが、山Pの演技が…。

彼には顔が1つしか無い!

スクリーンに映る彼の顔は、絶えず同じ顔しかしていない。
これは役者とゆう表現者として果たしてどうなのか?
顔の表情にしろ、声の出し方・抑揚等…常に同じ一定の表情で有り、リズムなのだ!
つまり彼には【演技の引き出しが1つも無い】と言っていい。
別に怒りの顔を、喜びの顔を、悲しみの顔をしろ!…等とは言わない。過去のスター俳優には、全く演技力が無くてもスターで有り続けた人は確かに居た。
でもだからと言って、それで良いって事にはならないだろう…って話。
一旦落ちたら、そこから這い上がるのは難しい。主演クラスで在れば在る程。

話を映画に戻すと。エンディングで、このシリーズに於いて大事な人の手紙で、人から人への継承のドラマは大団円を迎える。
しかもドラマ版のファンならば、次のシリーズへの期待をさせる終わり方で!

おそらく、ドラマ版のファンならば大満足なのは間違いない。初日と有り、真っ先に駆け付けたで在ろうファンの、終映後の雰囲気からそれを感じた。
ドラマ版未見のおやじとしては、そんな雰囲気に押されながらも。エピソードの1つ1つは良いのに、どこかそれらエピソードや対象として描かれていた登場人物達が、ズレながら進んで行くドラマに違和感を感じずにはいられなかった。

2018年7月27日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン12(旧 スカラ座)