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ダンシング・ベートーヴェンのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

私は評論家ではないし、専門的な知識だとかは持ち合わせていない。だから、主観的で感覚的にしか物事を捉えられていないんだと思うけど…

そんな私の『第九』に抱くイメージは…

深く、大きな苦悩と…
それでも瞬間の歓喜に手を伸ばす…
人の在り方のイメージ。


作品の冒頭に似たような台詞があった。

『大いなる楽観』

確かに、そうだね…と頷いた。


途中、禅の話が出ていて、線ではなく円環であるという言葉があった。だから…苦悩も歓びも円環。そうで無ければ、きっと歓びは萎れて枯れて、二度と咲かなくなってしまうんだろう。

要は…連綿と、続いていくこと。

人が生まれ、新たな種を生み出して、死んでいく。花を咲かせ、枯れて、また花が咲くように…続いていく。

その円環を考える。
大いなる楽観と共に。

ヒトが生まれて、肌の色も、言語も、思想も分たれて拡がって、現在がある。

きっとこの舞台の瞬間の、限られた時間だけだったとしても、その一瞬の為に、作る側、観る側が集っている…ひとつの場所に。それさえも円環の一部に思える。

鼻で笑われるかもしれないけれど…

実はそれが、理想の世界の体現なんです。
至上のカタルシスの根源。

ボレロだってそう。

全てを収斂させて…
ひとつへと導くような旋律。
表現として、とても似ている。

どうしようもない自分自身も、この大きな大きな円環の一端を担って、いつかは過去となって、今を未来に繋いでいるって事を、感じさせてくれる。

繋がって、続いて…
ものすごい愛だな…なんてね。
そんな事さえ、考えてしまう。

どれだけ酷い世界だったとしても…
僅かに見えるキラキラしたものに、手を伸ばし続けなきゃいけないんだよね。

そう考えると…火に飛び込んで燃える虫を、笑えはしないでしょう?(苦笑)

ホド爺のエンドレス・ポエトリーの中で歌われた『燃える蝶』が想起された。爺は燃えても飛び続ける超人だけどね(爆)

この…遠くにあって、それでも温かくて、その熱さを求めてしまう…太陽のような光が『希望』なんだろう。

愚かしくとも、捨てられない欲求。
人が、人である証。


それにしたって『あらすじ』を書いた人は何を考えてたんだろう?それを訴えたい作品じゃないでしょうに…(苦笑)

どんな素晴らしい舞台であっても、それを作り上げるのは人間で、時に不格好に…人間くさく、それぞれの選択を続けながら進んでいく…そんな風にも見えたけどね。

そう考えると、確かに今のこの酷い世界も…これはこれで『人間くさい』なんだわって、自嘲的な笑みが浮かびそうになった。

やっぱり観るなら…
こういう作品だねぇ(独白w)
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