かず

共犯者たちのかずのネタバレレビュー・内容・結末

共犯者たち(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

U-NEXTの無料期間に自動付与されるポイントを使えば無料で見れた!

正直、本作を観て、言論を弾圧することがここまで簡単であることにショックを受けた。ジャーナリズムはここまで脆いものなのか。

報道の是正・公正という名の政権によるメディアへの介入と言論弾圧。
報道機関の上位組織を権力者に都合の良い者で埋め尽くし、報道機関の人事権を掌握し、トップから報道機関内を掌握していく。報道会社の社長の人事権限を持つ放送文化振興会のトップに政権側の人をおき、さらにその会の幹部までも政権側の人間で埋め尽くす。
対抗された場合は、都合の悪い者を警察と検察の力をもって排除。
徹底した弾圧により、抵抗する者も家族や仲間の危険を回避するために屈してしまう。そして、抵抗する僅かな記者たちには、狂人・悪人のレッテルを貼り排除する。
アナウンサーや俳優などの政権に都合の良かったり繋がりのある有名人のメディアへの登用。印象操作。

こうすれば、言論弾圧は容易に達成できてしまう。

言論の破壊は、国をも破壊してしまう。この責任を取ろうとする者は、誰もいない。
報道機関は、政権の暴徒を無視するということにより、共犯者と成り下がる。

だからこそ、メディアや主権者たる国民による権力者の監視が必要不可欠なのだ。

本作では、ジャーナリズムの死・言論弾圧を象徴するような出来事が起こる。セウォル号沈没事故の誤報報道だ。
セウォル号沈没事故の報道において、報道各局が現場記者の言葉を無視し、「全員救出完了」と誤報を大々的に報道した。現場記者は上に誤報であることを報告するも、上の人間はそれを無視し、政府の大本営発表を垂れ流すのみとなっていた。
その結果、現場の捜索隊は上からの指示で何も出来ず、救助が大幅に遅れ、沈没する船に取り残された304人が死亡・行方不明という大惨事になってしまった。
我が子を亡くして憤る遺族に対して悪態をつき、さらに、政権は救助出来なかった責任を現場の捜索隊に押し付け、報道機関KBSの当時の社長は誤報の責任を部下の報道局長に押し付け辞表を出させて記者会見で謝罪させた。この姿勢は、事故と同じくらい最悪だ。
(当時のKBS社長は、報道局長に辞表を出せとは言っておらず、「自分で判断しろ」と指示したと認めている。)
また、「交通事故では毎年6000人も死んでるんですよ。」などと遺族に実際に言ってしまったこととか、どうかしてる。頭がおかしい。後に、不適切な発言だったと謝罪してはいるが、上からの指示による表面的なポーズに過ぎないところも醜悪。

セウォル号、全員救助の誤報謝罪 韓国記者協会、沈没から6年
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020041601001872.html
"韓国の複数のメディアは事故当時、不確かな話や他メディアの報道を確認もせず、誤報を連発した。当時の朴槿恵政権が救助の方針も立てていなかった時期に「渾身の救助作業をしていた」とも報じ、救助に失敗した政府の責任回避を手助けしているとの非難が噴出した。"

沈黙しないことに、意義がある。権力者たちが不正を働いているときは、声を上げ続けよう。

本作の最後に挙げられる懲戒されたジャーナリスト一人一人には心から敬意を。


改めて、『バイス 』のインタビュー時のアダム・マッケイ監督インタビューは必見!!
https://www.youtube.com/watch?v=OaZnOKtN70U

本作の関連作品として、アメリカのイラク戦争開戦のウソを暴いた『記者たち』も必見!!

韓国は、このようなドキュメンタリーを公開できるだけ、まだマシになったのか。それは、権力者に対抗したジャーナリストの皆さんのおかげ。


日本は大丈夫だろうか。他人事じゃない。
かず

かず