フクイヒロシ

水の足跡のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

水の足跡(2013年製作の映画)
3.5
浮世絵風絵画で世界的にも有名な現代美術家 山口晃が冒頭から出演していてビックリ。
新人動物写真家である主人公にグッサリと心に刺さるダメ出しを淡々と語るのが可笑しい。。
こんなに淡々と言われたら9ヶ月は立ち直れませんが、、この主人公は「なにクソ!」と再び写真を撮りに森に入ります。

で、そこで出会う謎の男女の一人が石坂友里。

マーティン・スコセッシ『沈黙ーサイレンスー』で窪塚洋介の妹役の方ですね。どう映画に出演している小松菜奈もなかなかに大変な目に遭いますが、石坂さんも観客の脳裏に焼きつくヤッバイ目に遭っておられました。。


***


大自然の撮影と録音の美しさは金子監督の『アルビノの木』に通じますね。

映像美にこだわりのある監督なのでこれ以前の作品も画は美しいのですが、
ちょっと禍々しいというか魔界っぽいというか、畏れを込めた異様な世界としての自然描写でした。

『水の足跡』『アルビノの木』ではストレートに大自然を映すことで、その美しさや圧倒的感がダイレクトに伝わります。

描かれているのは、自然と人間の境界線ギリギリの世界。
地理的にも「ギリ人間界」くらいに自然に飲み込まれそうなほどの〝ど田舎〟な訳ですが、やはりそのあたりになると精神的にも「自然と人間の境界線」がちょっとあやふやになってくるんだと思います。

***

これ以前の作品とは違って、画面に写っているものは普段見慣れているものばかり。

右腕のない着物ストリッパーとか鬼の骨とか明らかに寓話性のある要素はないのですが、美しい自然とありふれた人間を詩的なシーンで積み重ねていくとその先には人間と自然が溶け込む寓話的な世界へ。

人間には自然への潜在的な畏れと憧れがあると思いますが、今作では憧れの部分を拡大して表現されていると思います。

四コマ映画『水の足跡』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1978