ノラネコの呑んで観るシネマ

モリのいる場所のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
4.4
昭和の画家・熊谷守一夫婦の1日を描く物語。
まるで小さな森の様な庭から数十年出ず、ミニマムな生態系を眺めて暮らす守一の家には、色々な人が訪ねてくる。
守一を撮り続けるカメラマン、看板を描いて欲しいと依頼にくる旅館の男、隣に建設中のマンションの現場監督。
賑やかな家に流れる、都会とは思えない穏やかな優しい時間。
ファーストカットの“あの人”から、舞台が昭和なのはすぐ分かるが、具体的な年代は曖昧。
まあ終盤ファンタジー色も出てくるくらいだから、あくまでも寓話的な晩年の1日という解釈で良いのだろう。
観ているうちに、自分も守一夫婦の家に招かれ、まるで仙人の様な彼らの生き様を見ている気分になる。
やがて明らかになる、夫婦の悲しい過去と、それぞれの死生観は、過度にエモーショナルにならず沖田修一らしい描き方。
儚いからこそ一生懸命に生きて、命を慈しむ。ある意味もの凄く贅沢な、あんな庭が欲しくなる。
ジワリと静かな余韻が広がる、いい映画だ。
ところでニコマートは私の最初の愛機で、よく出来たカメラだったけど、あれをメイン機にしてるプロカメラマンていたのだろうか?