沖田修一監督のゲストトーク付き上映会にて。
冒頭のシーンにもある、昭和天皇の「何才の子どもが描いた絵ですか?」でおなじみ熊谷守一。彼が正しくコドモな翁であったことがわかるエピソードと、周囲の人々がそんなモリに惹かれている様子がなんとも微笑ましく描写されていて、沖田監督の「ほのぼのふふふ」が発揮という感じ。会場はずっとクスクスが絶えないほんわか空間だった。「あっ、モリいる(笑)」っていうカットが絶対笑っちゃって好み。
モリもこう見ていたであろう、虫の接写カットが数多く挟まれていて、足音まで入れている力の入れよう。だんだんとかわいい〜って思えてくるから不思議。石ころひとつとっても、万物全ての存在が必然であることを確信できるような、ちいさな存在の向こうにこの世のすべての物語を見透かしているようなモリの眼が、いかに尊いものだったか。
樹木希林の魂を感じる演技をまたひとつ見終えてしまった、とちょっと寂しくもあり。
以下トークメモ
・「キツツキと雨」撮影中に山崎努が熊谷守一つけち記念館に行っていて、その話をなんとなく覚えていたところから今作の構想に。脚本をまず書き上げ、それを携えて山崎努に真っ先にオファーしに行った。
・樹木希林は「山崎さんと夫婦になれるなら」と速攻でオファー快諾
・人が多く出入りする熊谷邸、色んなところが開け広げてある。風通しのいい縁側では樹木さんがよく休憩していて、本番となるとそこからよっこらしょと移動してくるもんだから、もはや住んでるのでは?くらいの馴染み方だった。
・夫婦で囲碁をしているときに奥さんが裁縫しているのとか(このとき縫ってる服があとで出てくる)、モリがゴミを燃しやすいように、奥さんがゴミの中の紙束をくしゃくしゃ丸め直すのとかは、樹木さんのアイディア。あえて説明はないけど、わかると胸がじんわりする要素になって、監督としても好きな描写になったよう。モリが囲碁めっちゃ弱いのは実話。(かわいい)
・石を移動しただけで一日中見ていられるのも実話。「なにそれって感じですよね(笑)」と、思わずツボといったように笑う監督にほのぼのした。
・「アリは左の2番目の足から歩き出す」、スタッフも検証したけど誰もわからず。