Yoshitsune

とらわれて 閉じ込められたダダーブの難民のYoshitsuneのレビュー・感想・評価

3.2
国連UNHCR難民映画祭 「観なかったことにできない映画祭」

その1 「とらわれて/Warehoused」

「働かずに生きてもらう。全く常識に反しているが、これが難民政治の裏側なのです。」

 ソマリア難民を中心に登録45万人、実際には60万人が住んでいると言われる世界最大の難民キャンプ、ダダーブ。1991年、ケニアとソマリアの国境沿いの荒地で収容許容人数13万人から始まったダダーブは今や世界最大となり、20年以上も難民生活を続けるいわゆる長期化状況にある難民が大多数を占め、さらにはその子、孫の世代まで誕生している。にも関わらず、彼らは新しい生活を始めることができない。彼らは難民キャンプから許可なく外出することは許されておらず、働きたくても労働は禁止され、ただ配給によって生かされているのみ。出口となるはずのResettlement/第三国定住のシステムも年間1,500人の認可者は1.5万人の申請待ちを処理するだけでも10年もかかる計算で、さらにこのキャンプでは年間数万人の子供が生まれている。絶望してソマリアへの自主帰還を選んだ人々に待ち受けるのは略奪、切断、そして、死。。。

 八方塞がりな難民キャンプの現状を難民のある一人の若いリーダーの半生を中心に捉える。囚われているように生かされている中で、夢を見出し力をつけ、いつか訪れるかもしれない希望に縋って生きていく。。。

 欧州難民危機が国際問題になって久しいが、アフリカの難民を取り巻く状況こそ緊急的であり深刻である。ケニアでは治安の悪化を難民の責に帰する世論が強く、2015年春に政府はダダーブの閉鎖を決定した。60万人の将来はまるで不透明な現状である。仮に追い出されたとして、配給で生かされ続けてきた大多数の難民たちに一体どうやって生を見出していけと言うのだろうか。「働けないのに生かされる。」現実社会とは全くあべこべの難民キャンプでの生活は徐々に難民を無能力者に育てあげる。

 こうした事態に危機感を持つ難民たちは自分たちなりにできることを見つけてスキルを磨こうとする。リポーター、ラジオパーソナリティ、映画脚本家……。そしてそれに限られたマンデートの中で応えようとするUNHCRやクラスターのスタッフたち。無関心で鈍重な国際社会や政府に見切りをつけ、難民の経済価値、可能性を信じ、また難民自身も自らの可能性にかけ足掻こうとする長期化難民の一部始終が細かく描かれていた。


……もっと避妊推進した方がいいような気も。(子孫増えすぎ。性病もある)
Yoshitsune

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