けーはち

サニー/32のけーはちのレビュー・感想・評価

サニー/32(2018年製作の映画)
3.0
2004年、佐世保小6女児同級生殺害事件──

同級生の首をカッターナイフで切って殺す凄惨な事件を起こした加害女児のかわいらしい容姿は、集合写真等からネットで流布、「NEVADAたん」とあだ名され一躍歪んだネットユーザーにはアイドル的な扱いを受けた。

本作では事件の14年後「サニー」(本作での加害女児の呼称)と間違って拉致された女性の運命を、リリー・フランキー&ピエール瀧といういい加減見飽きたサイコ怪優や、門脇麦という若手演技派を脇に揃え、白石和彌監督の『凶悪』な作風‼‼……だと思ったら、中盤からワケわからん展開で、ご覧の平均2点台の評点と相成った。

私はこれを白石監督流のアイドル映画だと捉えた。暴力説教・強制的な自己批判・抱擁による受容と自己啓発セミナーめかして描かれるのはアイドルという宗教だ。

主演の北原里英は秋元康系のアイドルで、2018年春に「卒業」決定していた。彼女にとって本作はアイドル人生の総決算。

「サニー」は幼少期に衝動的に友達を殺してしまっただけなのに、勝手にアイドル化され、拉致られ、キモい連中から様々な願望や欲望を押し付けられそれらしく振る舞うことを要求された。有り体に言えばアイドル活動そのものの暗喩である。

自ら進んでファンを叱咤し説法する教祖、ひいては飛翔と自己犠牲を成す「神」のような存在になる、といったくだりはファンタジー的な描き方ながらスーパーバイザー秋元康大先生による、アイドルとはそうあれかし、というイメージなのだと思う(エンドロールで冗談めかして少女の待つカラオケボックスへ突入するシーンもあるけども「神」なので死んで復活してこそ奇跡が完成するんであろう)。

何というか、別段アイドルオタクでない観客的には、「ふーん」というより他はないのかもしれないが、女の子がそれだけ青春を燃やしてできるものに意味がなかろうハズがない。そういう妄念が他ならぬキモいオッサンによるアイドルの神格化なのかもしれないが……